飽食の神は独神を喰らいたい

 人にあらず
 神にあらず
 妖にあらず
 ひとの形を成するもの
 ――独神

 僕は、このひとを主とする。せねばならない。
 一血卍傑によって産魂むすばれた僕、アキグイノウシは目の前の女に言った。

「君が独神だね。じゃあ僕に好きなだけ貢いでいいよ!」

 飽食の神である僕の第一声。
 ありがたいと傅くかと思えば、独神は少し眉尻を下げた。

「……はい。じゃあ少しずつ貢がせてもらいますね」
「少し? なんで? 食物でも国でもなんでも持ってきていいんだよ? 遠慮しないで!」

 謙虚な独神に促していると突然、頬に衝撃が走った。

「いったぁ。もう!! 僕を誰だと思ってるの! あのイザナギの冠から生まれた神だぞ!!」

 頬を打った誰かさんに振り返ると、僕はぎょっとした。

「ああ、儂の冠だったな」

 そこにはイザナギ――父上が立っていた。
 手の感触ではなかったけれども、まさか天之尾羽張で僕を殴ったのだろうか。
 不本意だが、これ以上の暴力は遠慮したい僕は腰を低くしてやった。

「お元気そうでなによりです、父上」
「儂の子であるならば、行儀良くせねばならんぞ」

 イザナギはふんぞり返っている。
 はーあ。せっかく僕の天下だと思ったのに。
 さすがの僕も神々の父であるイザナギには敵わない。
 父上は僕から視線を外すと、独神の方を向いた。
 途端に、声色が変わる。

あるじよ。こやつは儂から剥がれ落ちた赤の他神たにんだ。こやつの素行は儂とは無関係であるからな。よく覚えておくように」

 僕はむっとした。

「元々は父上なんですから、父上は僕そっくりで間違いありません」
「と、本人は思い込んでいるが違うぞ。儂はこんなにがめつくない。一緒にするでない」
「そっか! 僕は、妻を追いかけておいて逃げ帰るような薄情者じゃないってことですね! さすが父上、僕をよく存じておられる!」
「ええい黙れ! あとイザナミちゃんのことは置いておけ!」

 父上は僕を睨みつけてから、主に向き直って色々と言い訳していた。
 父上のアレコレなんて八百万界中が知ってるのに。往生際が悪い。
 主が両手を叩いた。

「イザナギはこの後討伐でしょ? もう誰か待ってると思うから行ってきて」
「あ、ああ、任せろ。すぐに終わらせる」

 そう言って父上は引き戸へ向かい、その途中僕に振り返って何か口を動かした。
 最後はわざとらしくぴしゃりと戸を閉めた。

「アキグイノウシ、どうしたの?」

 僕は素直に答えた。

「父上からの伝言です。余計なことを言うな、と」

 主はきょとんとして目をぱちぱちさせた。

「…………ふうん。そっか」

 判ってなさそうな顔。これじゃ先が思いやられる。

「ねぇ、君って主なんだよね? それくらい判ってあげたら? 察しが悪いと人望を失うよ?」
「……え?」

 主は言い返しかけたが、やめたようだった。

「………………あ、ああ。そうだね、うん。ごめんね」

 全く。こんなのを主扱いするなんて。父上も見る目がない。
 独神が僕らとは違うってことは知ってるけど、特別優秀ってわけではなさそうだ。

「正直君は僕の好みじゃないけど、君が僕を好きになることを許してあげる。ほら、好きなだけ貢いで」

 主は少し間を置いてから、小さな包みを取り出した。

「飴ちゃんあげる」
「えー、たったこれだけ? 供物に貴賤はないけどでも最初の供物なのに」

 口の中に放った小さな飴玉は僕の歯に突き立てられて砕け散った。
 数度噛んだだけで消えてしまう。
 包装紙は多少もったがそれでも物足りない。

「僕はね、供物をもらってないと元気がなくなっちゃうの。元々罪穢れを食べる神なんだけど、供物なら食べ物が多いかな。供物あっての僕だからね。大事なのは数だよ」

 僕の説明に耳を傾けていた独神は強く頷いた。

「判った。気をつけるね」
「僕の主になるなら覚えておいてよ。供物がなくなると僕は形を保てないんだから」
「うん。じゃあ私からもお願い。悪霊退治、手伝ってくれる?」
「もちろん! 悪霊のせいで僕への供物がどんどん減っちゃってるからね。僕も困ってたから丁度いい」
「ありがとう。じゃあこれからよろしくね」

 貢ぎ物を欠かさないっていうのが口だけじゃないといいけど。
 僕は半分くらい主を疑いながらも、今後ここで生活していくことを受け入れつつあった。







 一ヶ月もすると本殿にも慣れてきた。
 英傑たちはみんな独神のことが好きらしい。
 討伐から帰ってくると真っ先に独神に報告しに行くし、なにかと理由をつけて独神の近くにいようとする。
 まぁ、部下に嫌われてる主よりはいいけど、なんでそんなにもてはやすんだろう。
 そんなに凄いとは思わないんだけど。
 僕はたまたま見つけた英傑に話しかけた。

「ねぇ。独神ってよく判らないけど、どういうひとなの?」
「ふっ。ならば教えてやろう」

 アシヤドウマンという赤髪の陰陽師が髪をかき上げた。

「主人はオレの伴侶だ」

 その瞬間、熊ほどもあるキツネの式神がアシヤドウマンを食らった。

「~~~!!! ~~!!!!!」

 もがいてるもがいてる。

「独神は、何者にも囚われることのない存在。とでも言っておきましょうか。少なくともどこぞの残念陰陽師と個人的繋がりはありませんよ」

 式神を放ったであろう男はそう言った。
 人のくせに獣の匂いがする。交ざりものだが、それなりの力はありそうだ。

「君はそこそこやるヤツみたいだけど、それでも独神は捕まえられないの?」
「ええ。私如きではとてもとても」
「じゃあ君はそうでもない陰陽師なんだな!」
「……ええ」

 ま、所詮人なんて一生子供みたいな存在だ。
 僕にも判らない独神のことなんて、当然理解できないんだろう。
 そうだなぁ、オモイカネあたりなら判るのかもしれないな。

「教えようと頑張ってくれてありがと! 他のヤツに聞くから無理しないでいいぞ!!」

 僕は礼を言って走り出した。
 背後でアシヤドウマンの悲鳴が大きくなった気がする。陰陽師って地味で暗いと思ってたけど、案外元気なのかもしれない。

 オモイカネは見つからなかったが、途中で何人かに独神のことを聞いてみた。
 ある英傑は「主は特別な存在だから」と言い、別の英傑は「守るべき人」と答える。
 でも誰も具体的に説明できない。
「独神だから特別」「特別だから独神」
 ……結局、英傑たちが独神に何を見いだしているのか判らなかった。

 そんなことを考えていたら、当人である主が廊下を歩いているのを見つけた。
 僕は駆け寄り、手を出した。
 すると主は巾着の中から飴を一つ取り出し、僕の手のひらに置く。

「今日はぶどう味だよ」
「やった!」

 包装紙もまとめてバリバリと食べた。
 貢物は全部食べるのが流儀。
 箱でも皿でも渡された物はなんでも食べている。
 と主に言うと、ほんのり甘い包装紙の飴に変えてくれた。
 こういう殊勝なヤツは嫌いじゃない。
 最初に宣言したとおり、主は僕と会えば必ず飴をくれる。一度も欠かすことはない。
 病気の時だってそうだ。
 さすがの僕でも怪我や病気の時にわざわざ供物を貰おうとはあまり思わないが、主は病気で寝込んでても飴をくれる。
 まあ、僕は神だから。当然といえば当然なんだけど……。

 でも……なんだろう。
 主が飴をくれる時、ちょっと笑ってくれるのが嬉しい。
 供物をもらえるから嬉しいんじゃなくて、主が僕のことを気にかけてくれてるのが嬉しいというか……。

 これって……もしかして。

 僕も他の英傑たちと同じようなことを主に思っているのだろうか。
 考えているとモヤモヤしてきた。
 そうだ。
 英傑たちが主に手紙を渡しているのを見たことがある。
 同じ屋根の下にいるのにって思ってたけど、やってみようかな。
 これで書けなかったら、僕は独神のことなんてなーんにも思ってないってことだもんね。

 早速自分の部屋で紙を広げる。どこかの部屋で拾った適当な紙だ。
 どうせ書けない手紙ならこれでいいだろう。

 えーと……。
 ――主へ。いつも飴をありがとう。主の笑顔が好きです。

 ……うん?
 僕って主の笑顔が好きだったのか?
 知らなかった。
 でも納得してるってことは、そうなのかもしれない。

 続きを書いてみよう。

 ――主がいつも欠かさず貢いでくれるのは、僕のことが好きだからですよね。

 そうかもしれない。
 そっか、主は僕のこと好きなんだ!!
 早速告白させてあげなくちゃ。
 僕が手紙を二つに畳んで立ち上がると、

「なにしてるの?」

 いきなり声がした。
 フウマコタロウだ。勝手に部屋に入ってくるなんてさすがは忍。品性のカケラもない。

「手紙書いてただけ。いいから出て行ってよ」
「……独神ちゃん?」

 コタロウの声が、低くなった。

「あ、ああ。うん、そうだけど」
「……そう」

 コタロウはそのまま手紙をひったくった。

「ちょっと!」
「これは僕が預かってあげる」
「いや、返してよ! 今から渡しに行くんだから!」
「独神ちゃんは大忙しなの。こんなつまらないものを渡しちゃ失礼でしょ」

 そう言って、コタロウは僕の初めての恋文に火をつけた。

「え!?」
「……はあ。…………結局こうなるのか」

 コタロウの笑顔が、さっきまでと全然違う。
 言葉と表情がちぐはぐで気持ち悪い。

「とにかく。独神ちゃんは忙しいし、気疲れてしてるんだから余計なことしないの。判った?」

 いや手紙くらい良いでしょ。
 と言い返そうとしたけれど、コタロウは冷え切った顔をしていた。
 一瞬気圧されてしまい、「はい」と言わざるを得なかった。
 するとぱっと人懐こい笑顔に変わる。

「判れば良いんだよ。聞き分けの良い奴は嫌いじゃないよ。独神ちゃんもね」

 と笑顔で消えていく。
 僕が書いた手紙は小さな紙片となって黒くなった。
 僕はそれを拾って、かじった。







 あの日から何日か経った。
 主への並々ならぬ想いを自覚した僕は当然、何度も主に貢がせてあげた。
 なのに、距離が縮まる様子がない。

 主ってなんであんなに鈍感なの!?
 この僕が、飽食の神が、君の物は優先的に食べてあげるって言ってるのに!???

 一つ判ったよ。英傑が主に群がる理由。
 人の気持ちなんて全く判らない病的な鈍感だってことだよ。
 そりゃむかついて何度も行くしかないよね。
 主ってほんと……ダメダメなんだから。
 僕が支えてあげないと、八百万界の救済なんて夢のまた夢だよ。

 そうするとまず、僕の想いを知ってもらわないといけない。
 運が良いことに、丁度いい祭事があるんだよ。

 二月十四日の『破恋体の日』

 お世話になった人にお菓子を渡すんだって。
 お歳暮の送り合いみたいなもの。

 ……これを聞いて思ったよね。
 アキグイノウシがなんで他人にあげないといけないのかって。
 思ったけど。葛藤したけど!
 他のヤツがやるのに、やらないわけにいかないでしょ。
 だから、することにした。

 主はさ!!!
 僕が他人に物を渡す意味を判るよね?????
 本来、僕が貢がれる方で、貢ぐのは専門外!!!
 渡す側になったなんて、一度もなったことないんだからね!!!!
 この時点で、僕の贈り物は誰よりも尊いものだって判るでしょ。

 そして僕は頑張りましたよ。
 見よ!!
 僕渾身の、”辛い”血代固を!!

 血代固作りに悩んでいる時、鏡を持った神族に言われたのさ。

あるじ様、甘いものが苦手ですから気をつけて下さいね」

 血代固っていうのは甘い菓子と聞いていたから、教えてくれなかったらとびきり甘い物を作っていたところ。
 やっぱり同族である神族は信用できる。

あるじはさ、ほら倹約家だろ。ハデなもんより地味なもんが好きなんだぜ」
「べーだ。アマノジャクの言葉なんかどうせ反対だろ! 僕を騙そうたって甘いよ!!」

 反面妖族はどいつもこいつも最悪だ。

 僕が机に向かっている主に話しかけようとしたら「わっ!」と脅かすヌエ。
 僕が夜に主の部屋に入ろうとしたら斬りかかってきたイッタンモメン。
 僕が主の風呂上がりを待っていたら岩を投げつけてきたガゴゼ。
 僕の部屋でブツブツ呪詛を唱えていたイヌガミ。
 主に飴を貰おうとしたら転ばせてきたザシキワラシ。
 毎晩酒瓶を投げつけてくるシュテンドウジ。

 これが全部、二、三日の出来事。度が過ぎてるでしょ。
 妖族っていうのは、僕たちと同じ似た存在だけど性根が曲がってて救いようがない。
 あーヤダヤダ。
 妖のことなんかどうでもいいから、とにかく早く主に渡さないと。
 今日貰った中で最高の供物だって、みんなの前で言わせるんだから。

 僕は意気揚々と執務室へ向かった。
 扉を開けると、長机にはあふれんばかりの贈り物が置かれていた。
 部屋に入っただけで甘い匂いがする。
 主の姿を探すと、机の向こうで何かを包んでいる最中だった。

あるじ!」

 主は顔を上げて、僕に微笑んだ。

「来たね。はいどうぞ。ちゃんと人数分用意してるよ」

 人数分って。僕だけのじゃないのか。
 いやもしかしたら、中身が特別かもしれないし。
 僕はかわいい帯飾りがついた包みを噛み開けた。
 中身は血代固だ。
 早速口に入れてみると、甘い。とびきり甘くて美味しい。
 僕は主がくれた全てを噛み砕いて飲み下した。

「じゃあ今度は僕の食べてよ」
「アキグイノウシから貰うなんて新鮮だね。……わざわざありがと」

 主は僕が二日かけた包装を丁寧に開いた。
 中身の血代固だけを指でつまんで口に入れる。

「どう!? 美味しいでしょ!」

 主は急に口を押さえた。
 僕の血代固を置いて、部屋の外へ走って行く。

「そんなに美味しかったの!? やった!!」

 僕の血代固が最高だ。僕、貢ぎ物の才能もあるのかも。
 だてに生まれてからずっと貢がれ続けてないしね。

 その日の夕食に主の姿はなかった。
 僕の血代固の味が上書きされないようにってことかな。
 だったら明日も持って行かないと。

「主! 今日も血代固持ってきたの! 昨日よりもっと美味しいよ!」
「っ!? い、今おなかいっぱい。だからダイジョウブ」
「遠慮しないでよ。僕に貢がれることなんてないんだよ。君だけなんだよ!!」
「い、いいいい。お、恐れ多いから。……とにかくおなか減ってないから」

 そう言いながら、走っていった。
 僕ほどの神にもらえるから気後れしたのかな。畏れられるのは好きだけど、今回は食べてくれていいのに。
 厨に行くと、主がウカノミタマから揚げ餅を手渡されて食べていた。

「なんでウカノミタマの揚げ餅は食べてるの!? だったら僕のを食べてよ!!」
「え!? え、いやなんのこと? 見間違いじゃないの?」
「どう見てもそうでしょ!!」
「そんなことないって。あ、私、呼ばれてるから行くね」

 またまた走って行ってしまった。
 変だな。主、おなかいっぱいって言ったのに他の物は食べてる。
 ……もしかして、特別すぎて食べられないのかな。
 じゃあもっと気軽に食べられるものにしよう!

 厨を借りて作っていると、ツクヨミが問答無用で破壊した。

「ちょっと! 食べられないゴミなんて作らないでよ。食材が勿体ないわ」

 料理オンチにまで言われるなんて。
 嫉妬って神すら醜くさせるなぁ。

「君の料理よりマシだけどね」

 月の女神はカチンときたのか、小さな拳を丸めて僕に殴りかかってきた。
 当然僕はやり返した。
 私闘禁止なんて知らない。
 腹が立つならやればいいんだ。

 ウカノミタマが主に告げ口して、僕らは説教されてしまった。
 ツクヨミはスンスン泣いているけれど、あざとくてイライラする。

「…………アキグイノウシも、私闘禁止って知ってるならやめてね」
「やめてもいいけど、じゃあ僕の作った激辛料理食べてくれる?」
「げ。激辛はいいや……。普通のないの?」
「え、辛いのが好きなんでしょ?」

 主が大きなため息をついた。

「……だから血代固が辛かったのね。あのね、私、甘いのは好きだけど、辛いものは苦手なの、おなか下すから」
「ええええ!?」

 驚いた。だって、アイツは甘いのが苦手だって。
 僕はようやく、アイツに嘘をつかれていたことに気づいた。

「僕のせいじゃないよ! 鏡持ってるヤツがそう言ったんだよ!!」
「鏡って、イシコリドメ? あの子は今年も甘い血代固作ってくれたけど……? もしかして聞き間違えてない?」

 ……だめだ。
 ここでは神族も信じられない。
 自分と主以外みんな敵だ。







 討伐って面倒だなぁ。悪霊を倒すのも別に何も楽しくない。
 けど、今日は報告ができるから心が弾む。
 組んだ相手がビンボウガミで良かった。
 僕がやりたいって言ったら「え゛………………。あ、うん。あ。…………はい」って快く譲ってくれた。
 良かった、本殿にまともな神がいて。
 ビンボウガミとは神同士、仲良くしてあげないとね。
 僕は早速執務室へ行った。

「主!」

 報告はすぐに終わってしまったから、そのまま主と楽しく雑談をした。
 やっぱり僕が話した時が一番楽しそうだよね、主は。

「え! 主も好きなの! 明日暇? じゃあ僕と――」
「ご主人!」

 ずいっと僕と主の間に入ってきたのはジロウボウ。天狗の一人だ。
 むっとした僕は、当然ジロウボウと主の間に入り直す。
 するとジロウボウがまた僕らの間に入ってくる。
 だから僕もまた間に入って。アイツも入って。入って。入ってはいってはいって

「はい。そこまで」

 よく通る声が僕たちの動きを止めた。
 どこから出てきたのかショウトクタイシが、肩をすくめて僕らを注意する。

「独神様はこの後ご予定があります。お二人共お引き取り下さい」

 行くものか、と僕は当然拒否するが、ジロウボウはあっさりと退いた。

「悪ぃ……。邪魔したな。ご主人、またな」

 とぼとぼ歩いちゃって、なっさけない。
 僕は他人にちょっと言われたからって従ったりしな、

「アキグイノウシ。また今度ね」

 主はさっさと机の上を片付け始めた。
 本当に用があるようだ。
 主がいないならこの部屋に用はない。大人しく帰るか。

「判った。またね主」

 主は僕に手を振ってくれた。僕もいっぱい振り返した。
 部屋を出て少し経つと、主とショウトクタイシが部屋を出て、僕とは逆方向へ歩き出した。
 主と、頭一つ分高いショウトクタイシが並ぶ姿を見ているとイライラした。

 アイツも主との仲をよく邪魔してくるんだよなぁ。
 いっそ僕があの地位を奪えばいいんじゃない?
 そうしたらずっと一緒にいられるよね。主も本当はそうして欲しいんでしょ?

 僕はショウトクタイシの背中を狙って術を放つ。
 まっすぐ術が飛び、ショウトクタイシの背中で霧散した。

「いい加減にしてもらえますか」

 振り返ってショウトクタイシが睨んできた。
 最初から防護術を施していたのだろう。卑怯な。ここには仲間しかいないのに疑ってるの?

「じゃあこっちね」

 主は隣にいたショウトクタイシを先に行かせ、自分が後ろについていく形を取った。

「危険ですから。独神様は前へ」
「部下を守るのは主の役目でしょ。おとなしく守られてて」
「いいえ。私が」
「いいからたまには私がかっこつけたっていいでしょ」
「そういう話ではありません。上に立つ者が」
「はいはい」

 ショウトクタイシは主に押されて、まんざらでもない顔をしている。
 主は主で、だらしないショウトクタイシの反応を楽しんでいるみたい。
 僕のせいで親密になっちゃった。……失敗。

 攻撃はあんまりいいことないかも。私闘禁止があるから怒られるし、別のヤツがベタベタする口実を与えてしまう。 
 そんな単純なことじゃなくて、僕にしかできないことをしよう。
 ときたらやっぱりこれでしょ。

「主、ちょーだい!」

 手を差し出す。
 主はいつもの巾着を取り出し、紐を引っ張る途中で顔色を変えた。口を開いているのに一向に僕の手に乗せない。

「……ごめん。切らしてたの忘れてて」

 すまなそうに言う主。僕は当然抗議した。

「なんで忘れてたの? 言ったよね! 僕と会ったら必ず供物を渡せって!」

 主はしばらくじっとしていた。そして右耳に触れ、付けていた耳飾りを取った。

「これでどうかな。……食べられなくて悪いけど」

 小さな石がついた耳飾り。
 石といってもその辺に転がっている石ではない。透き通った青い宝石。
 主が普段身につけているからか、その石は主の霊力がこもっている。
 手にしているだけなのに、まるでここに小人の主が立っているみたい。本物よりもより、主を感じる。
 口が勝手につり上がった。

「しょうがないなぁ。今回はこれでいいよ。供物は食べ物に限らないからね。気持ちが大事なんだよ、気持ちが」

 主は用事に戻ると言うので別れた。
 僕はぎゅっと握った耳飾りに興奮していた。
 僕も耳に穴を開けよう。そうすれば、主とおそろいだ。
 刀だと大穴になるから、細いものがいい。縫い針なんてどうだろう。何度か刺せば丁度いい大きさになるはず。
 主と同じ物を身につける自分を想像して楽しんでいると、後ろで声が聞こえた。

「片方だけでは落ち着かぬだろう。せっかくだから新調するのはどうだ。儂がいれば街歩きは問題あるまい」

 僕は首が引きちぎれる勢いで振り向いた。
 なんだアイツ。主に最悪な提案をしている。
 今買いに行ったらお揃いにならない。

「待って!! 僕も行く!!」

 足を踏みならして、主と、隣にいる卑怯なヌラリヒョンに近づいた。
 睨み付けているがヌラリヒョンは上から僕を見下ろして首を傾げる。

「おや、其方は確かオジゾウサマに呼ばれておっただろう。約束は守らねばな。さて主、町人の用聞きをしながら行こうか」
「アキグイノウシ、オジゾウサマの言うことちゃんと聞いてね。討伐は勝手なことしちゃダメだよ」
「行かない! そんなの他のヤツに行かせればいいじゃん」

 僕は後悔した。
 主が、すっと目を細めたからだ。

「……そういうワガママ、困る」

 以前も、討伐をすっぽかした時にこうやって注意された。
 無視したら供物を出さなくなって、僕とは目を合わさず一切言葉を交わさなかった。
 その時の恐怖を覚えている僕は、「ごめんなさい」と言って、すごすごと集合場所へ向かった。

 町の買い物についていったらなにか買ってもらえたかもしれないのに。
 新しい耳飾りだって、僕が選んで、またもらいたかった。耳飾りに限らない。お菓子でもなんでも僕が貰って嬉しい物を買わせたかった。
 あまりの悔しさに思わず溜息が出た。その瞬間どこからか舌打ちが聞こえた。
 誰だろう。何人かいるので誰かは判らない。
 きっとさっきのヌラリヒョンのことだ。
 ああやっていやらしい提案をして、主を連れていって。他の英傑も煮え湯を飲まされているに違いない。
 ヌラリヒョンって嫌われてるんだなぁ。かわいそ。
 僕は貰ったばかりの耳飾りを耳に突き立てた。耳飾りの軸が歪み、柔らかい肌が裂けた。







 今日は夏祭りなんだって!!
 主は浴衣を着るって聞いた。今日のために新調したんだって!
 一番に会いに行こう! そうすれば、一緒に行けるよね!!
 着替えるなら主の部屋だよね。よし声かけちゃおう!
 僕は早速主の部屋へ向かった。
 部屋の前にはすでに誰かが立ってる。ずるいぞ!

「もしかして着替え終わりの主を待ち伏せ? 怖いよ」

 そいつは僕を見もしないで、黙ったまま部屋の前の扉にもたれている。
 このサルトビサスケってやつ苦手なんだよね。
 不本意だけど二人で待っていた。しかしなかなか主は来ない。
 オシャレって時間がかかるんだなぁ。

「あ、馬鹿発見」

 フウマコタロウだ。こいつは大嫌い。しょっちゅう突っかかってくる。毎日バチを当てたいくらいだ。
 でもそんなことをすれば主に怒られるので、仕方なく会話してあげた。

「忍ってこうやっていつも主について回ってるんでしょ。気持ち悪。一人になれない主が可哀想」
「僕もそう思う。独神ちゃんは、いつもいつも一人になれなくてねー。おまけに毎回集られて可哀想」
「え、そんなことされてるの!? 主ってば、言ってくれれば僕がなんとかしてあげるのに」
「あはは! そうだよねー! 言ってくれればなんでもするのにねー!」

 コタロウはいつも目が笑っていない。
 こういうわけの判らないところが大嫌いだ。
 独神ちゃんって呼び方も嫌だ。なんだよ。ちゃん、って。馴れ馴れしい。忍のくせに。

「あーあ、ハズレだったなぁ。ねぇ、つまんないからなんか曲芸でもしてよ」

 コタロウは、一言も発していないサスケに声をかけたが、やっぱり何も言わない。

「ちょっとー。無視しないでよ。自分だってハズレだと思ってるくせに」
「一緒にするな。俺は頭の命令に従うだけだ」

 ようやくしゃべった。でも違和感を覚える。

「さっきからハズレってなに?」

 コタロウは僕の純粋な疑問に大口を開けて笑い出した。むかつく。

「だからなんだよ!」

 涙を指で拭いながら、コタロウは言った。

「文字通り。ハズレはハズレだよ。おまぬけさん」

 もしかして――――。
 僕が主の部屋を見ようとすると、サスケに止められた。

「頭の部屋に無断で入ることは禁じられている」

 いちいちウルサいな。でも落ち着いてみれば、部屋にひとの気配がない。
 僕は急いでその場を後にした。後ろでコタロウが更に笑っていた。

「独神ちゃんは、まともなヤツらと心底楽しく回ってるよ」

 僕以上にまともな英傑がいるわけないでしょ!
 早く、助けに行かないと。
 主は英傑たちに気を遣って辛いだろうから。







「だから! 主の護衛なら僕がするって! 他のヤツはその辺に突っ立ってるか、僕の盾にでもなっててよ!!」

 護衛が一番主に近づけるのに、全っ然やらせてくれない。
 僕はいっっっつも、興味のない町とか山とか川とかにいる悪霊を倒すだけ。
 つまらないし、僕の勇姿を主は全然見てくれない。
 もっと僕の姿が見えるところにいてくれればいいのに。

 だから主のお供をすることになったワタナベノツナに変わってって言ってるんだけど、全然聞きやしない。
 僕が何を言っても蔑んだ目で僕を見るばかり。神に対する態度じゃないからねこれ。

「……こうも傲慢では鬼と遜色ないじゃないか」

 ワタナベノツナは持っていた刀を無造作に僕に振った。
 無造作にっていうけど、僕じゃなかったら真っ二つになってるからね。
 頭おかしいよ。仲間に刀を振るうなんて。

「あー、いけないんだ! 主に報告するからな! 仲間を切ったって!」
「行ってくるといい。わたしは構わないよ」

 強がっちゃって。主に言われたら困るくせに。
 でも自分が言ったんだからね。
 有言実行な僕は執務室へまっすぐに進んだ。

「待て!」
「なに!」

 コイツ誰だっけ。ホネホネの……えっと、確かガシャドクロだ。
 今は急いでるって言うのに。

「……大丈夫か?」
「何が」
「いや困っているのかと思った」

 そういえばコイツ、餓者の怨念の塊だったっけ。
 いつも空腹でよく他人に食べ物を集るって聞いた気がする。

「困ってないよ。君こそ、何か欲しいなら僕以外を頼ってよね。僕は貰う専門だから」
「判っている。独神サマがアンタに飴をやっているのを何度も見た」
「ちゃんと見てるじゃん。そうだよ、僕が言えば、主はなんでもくれるんだ。どんな時だって僕には必ず供物を捧げる。いい心がけだよね」
「その言動をここの英傑は良く思わない」
「僕に関係あるのそれ」
「……オレ達は便宜上主に仕えている。英傑たちも主従関係なく慕っているヤツが殆ど。主の幸せを願う者が圧倒的に多い。その思想に反する者には様々な手段で対処する」
「あのねぇ、力を借りたがってるのは主でしょ。見返りはいるでしょ。特別扱いしない」
「……忠告したぞ」

 何言ってんだか。
 無駄話に邪魔されちゃった。
 僕はまず執務室をのぞいた。主はいない。
 どこかなと見渡しながら本殿中を駆け回った。

「あ、主!」

 廊下を歩いている主を見つけ、僕は駆け寄ってすぐ手を出した。
 主は僕の手に飴を乗せた。今日はいちご味。
 ふと見ると主の爪もいちごみたいな色で塗られている。
 いつのまにこんなことしたんだろう。誰と。どこで。
 熟れた赤いイチゴを摘むように、主の指を取ろうとすると、手の甲がびりりと痛んだ。

「……ああ、ごめんなさぁい。気が付かなかったわぁ」

 ミコシニュウドウが僕を見ずに言った。
 いや気がつかなかったわけないでしょ。わざとだろ。
 あれ、主のそばにいつからいたんだコイツ。

「主、またゴツい装備を見せてくれるんでしょ? 私ほんとアレ嫌なのよねえ。もっと可愛いものにならないの?」
「ねぇちょっとさっきの」
「いいから行くわよ」

 暴力女は主の腕を掴んで強引に連れて行った。主は僕を振り返って、少し頭を下げた。
 なんなのアイツ。たかが大きくなれるだけの妖が偉そうにさあ。
 主、あんなのに連れ回されてかわいそう。
 早く僕が助けてあげないと。

 様々な報復っていうけど、そんなもの怖がってちゃ主は一生見てくれないよ。
 僕は誰かと主を共有する気はないんだから。







「ねぇもらってもらって! なんでもあげるよ!」
「アキグイノウシ、落ち着いて。そんなにたくさんもらえないよ」
「え、貢がれるの好きでしょ!?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「じゃあなんで英傑からも英傑以外からも貢物を受け取るの? 僕のだってもらってよ!!」

 主はため息をついた。

「原則悪霊退治に必要なものを寄付してもらってる。本殿での贈り物は個人的なものだけど」
「じゃあ僕ともっと個人的な贈り物しようよ!! 嫁入り道具とか!」

 主はまたため息をついた。
 すぐため息つくな主。そんなんだから幸せが逃げるんだよ。

「そういう話じゃないんだけどなぁ……。どうやったら判ってくれるんだろ」

 なんだか頭を悩ませている。
 嬉しいな。僕のこと考えてるのって。

「主が僕のことで悩んでくれるなんて最高だね! まぁでも僕は物をもらうほうが嬉しいからね。悩むくらいならなにかちょうだい!」

 主は動きを止めて、鼻で笑った。

「そう言うなら……はい。こんどはいちご味だよ」

 飴をくれた。
 やっぱり主は僕のことが好きなんだな。嬉しい。
 だけど、僕は他の物でもいいと思ってる。

「……飴じゃなくて、新居でもいいよ」

 ぼそっと呟いた言葉。主は首を傾げていた。
 聞こえないふりをしているのかな。僕が新居を欲しがる理由。判るでしょ。普通。
 僕と主のおうちだよ。
 英傑なんか入れない、僕らだけの家。
 まぁ主もこう、いろいろと策を練ってるだろうからね。
 普通に僕に貢いじゃうと、英傑たちがウルサいから。僕に渡す方法を考えてくれてるんだよね。
 僕が信じて待ってあげないと。

 それにしても、飴を貰うのも飽きたな。嫌いじゃないけどさ。
 前にもらった耳飾りみたいな、特別なものがまた欲しい。
 そうだ。
 主の巾着から飴を全部抜いておけば、飴以外のものをくれるはずだ。
 主の部屋に忍び込んで――いや、堂々と入って、巾着を開ける。
 色とりどりの飴が詰まっている。全部僕のためのもの。
 でも今は、これじゃだめなんだ。
 僕は飴を全部自分の懐に入れた。
 空っぽになった巾着を元の場所に戻す。
 完璧。
 これで次に会った時、主は困って、きっと――。
 想像するだけで楽しくなってきた。
 主が「ごめん、飴切らしてて」って言って、代わりに何をくれるんだろう。
 それとも「買いに行こう」って二人で街に出る?
 どっちでもいい。どっちも嬉しい。

 僕って賢い。

 僕は機会を見計らった。廊下を歩く主を見つけ、すぐに駆け寄り手を出した。
 主は巾着に手を伸ばして――動きが止まった。

「……あれ?」

 巾着の中を覗き込む主。
 僕は期待に胸を膨らませた。

「……ごめん。切らしてた」

 困った顔をする主。
 やった! このまま――。

「ちょっと待ってて。今、部屋から持ってくる」

 主は走って行った。
 いや、部屋にも飴ないはずだけど。全部抜いたもん。
 庭を見ながら主を待っていると、主は手には新しい巾着を持って現れた。

「はい。今日はぶどう味」

 飴を手渡された。
 ……なんで?
 主、いつの間に買ったの? 僕が抜いたのはさっきだよ?

「主、いつ買ったの?」
「ん? 買ったのは二日前かな。大袋だったからいつもの巾着には入りきらなかったの」

 あっさりと言う主。
 なんだ。予備があったのか。
 じゃあ、予備も全部抜けば――いや、そうすると主に怪しまれるかも。
 どうしよう。
 廊下を歩きながら考えていると、誰かに声をかけられた。

「よぉ」

 サンキボウだ。

「なんだよ」
「なんだよ、じゃないだろ! なんかお前、悩んでそうな顔してたからさ」

 気さくに話しかけてくる。
 サンキボウは妖だけど、割といいやつなんだよね。

「別に」
「そうか? 主サンのことで悩んでんのかと思った」
「……まぁ、そうかも」

 サンキボウは「やっぱりな」と笑った。

「主サンのことなら俺に任せとけ。なんでも相談乗ってやるよ」

 なんでも、か。
 じゃあ聞いてみようかな。

「あのさ、主に特別なものもらいたいんだけど、飴ばっかりなんだよね」
「ああ、それな。お前は供物必要だからって。保存が利くもので持ち歩けるものっていうと飴が適当って言ってたな」
「うん。だから僕、主の巾着から飴全部抜いたの。そうすれば飴以外のものくれるかなって」

 サンキボウの動きが、止まった。

「……今、なんつった?」
「だから、飴を抜いたの。主の部屋から。そうすれば主、困って別のものくれるでしょ? 飴じゃなくて、身につけてる物とか、なんなら自分を捧げてくれる方がいいし」

 サンキボウの表情が、変わった。

「……お前、主サンをなんだと思ってるんだ?」

 声が低い。

「主サンはお前の特性に合わせて無理してるだけの、ただの同情なんだよ!!」

 僕は首を傾げた。

「え、でも毎日飴くれるし」
「それが同情だって言ってんだ! 主サンはな、お前が供物ないと弱るから用意してんだよ! 」
「仕方なく? 違うよ。主は僕のことが好きだから――」
「主サンがお前を好きなわけないだろ!!」

 サンキボウが叫んだ。
 周りの空気が揺れた気がする。

「主サンは英傑全員に優しいだけだ。それをお前は勘違いして、飴を隠して、主サンにもっと手間かけさせようとしてる。ふざけんな」

 僕は笑った。

「え、嫉妬? 見苦しいよ」

 サンキボウの顔が凍りついた。

「……なんだと?」
「だって君、主に相手にされないからって僕に八つ当たりしてるんでしょ? 主は君のことなんて英傑の一人としか思ってないもんね。僕とは違う」
「……」
「僕はね、主が毎日会いに来てくれるし、いつも笑いかけてくれるし、病気の時だってわざわざ飴を――」

 殴られた。
 いや、殴られたわけじゃない。
 サンキボウの拳は僕の顔の横で止まっている。
 壁に穴が開いた。

「……そういうこと二度とすんな」

 低く、静かな声。
 さっきまでの怒鳴り声より、ずっと怖い。
 でも僕は怖くない。

「ほらまた戦う気だ。みんな主が大事っていうくせに、主が定めた規律の一つも守れないよね」

 サンキボウの目が、細くなった。

「……お前が言うなよ」
「僕は守ってるよ? 私闘なんかしてないし。主との約束もちゃんと守ってる。飴を盗んだだけで、別に主を傷つけてないもん」
「盗んだ、って自覚はあんのか」
「うん。でもこれくらい許してくれるよ。主は優しいから」

 サンキボウは、深く息を吸った。
 そして吐いた。

「……あんまやってると、どうにかしちまうぞ。神だろうと関係ない。主サンのためなら俺は全力で相手する」
「また嫉妬かぁ……結局さ、僕と主の仲が羨ましいんでしょ?」

 サンキボウが、振り返った。

「……そう捉えるってわけか」

 笑っていた。
 でも目が笑ってない。

「なら証明してやるよ。お前がどれだけ主サンに迷惑かけてるか」

 サンキボウの周囲に風が吹き始めた。本格的にやる気!?

「だから私闘禁止だって!」
「主サンが困ってんのを黙って見てる方が、よっぽど規律違反だろ」

 腰に差している羽団扇に触れた時だった。

「サンキボウ! いたぁ! 探したよ!」

 主の大声で僕たちは二人とも肩を揺らして驚いた。

「へっ!? 主サン!?」

 サンキボウの手が羽団扇から離れる。
 さっきまでの殺気が嘘みたいに消えた。

「ちょっと連れて行ってほしいところがあるの。みんなに内緒にしておきたいからさ、ピューッとどうかな。忙しい?」
「い、い、いや! そんなことないって! 今か? すぐ行くぞ!」

 サンキボウの声が上ずっている。
 主は僕に気づいて、にっこりと笑った。

「あ、アキグイノウシもいたんだ。二人で何してたの?」
「別に! ちょっと話してただけ」

 サンキボウが先に答えた。
 僕を一瞬だけ睨んでから、主の方を向く。

「じゃ、行くぞ主サン」

 どさくさに紛れて、主を横抱きにしたサンキボウは飛んで行った。
 馴れ馴れしいって。あんなの許されないよ。
 なんで主、僕のことは抱かないくせに、天狗には抱かれるんだよ。
 僕だって、誰かが翼を捧げてくれれば空を飛べるのに。
 どの鳥でもいいから僕にくれないかな。子孫は一生飛べなくなるけど。

 壁に開いた穴を見る。
 サンキボウの拳が開けた穴。
 あの拳は、本当は僕に向けられていた。
 でも主が来たら何事もなかったかのように感情は消えた。

 僕への怒りより、主への――なんだろう。好き? 忠誠?
 よく判らないけど、とにかく主のことを一番に考えてる。
 ……僕と同じだ。
 いや、違う。
 僕の方が主のことを想ってる。絶対に。
 だって僕は、主に飴以外のものを捧げさせてあげようとしてるんだから。
 サンキボウみたいに、主を抱いて飛ぶだけの関係なんかじゃない。
 もっと、特別な関係。

 そうだ。

 僕には、究極の供物がある。
 今まで誰にも渡したことがない、特別なもの。

 ――――僕自身。

 神の肉体は貴重だ。霊力が満ちている。
 僕の一部を主が食べれば、僕と主は文字通り一つになれる。
 主の中に僕が宿る。主の血肉となる。
 こんなに素敵なことってある?

 僕は自分の部屋で、小さな刀を取り出した。
 左手の小指の先を、ほんの少しだけ削ぐ。
 痛いけど、我慢。主のためだもん。
 すぐに血が止まる。神だから。
 削いだ肉片を、さらに細かく刻む。
 もっと細かく。粉のように。
 これなら誰にも気づかれない。
 主は僕と気づかないまま、僕を取り込む。
 完璧な計画だ。
 厨へ向かう。
 主の食事の準備をしているワカウカノメがいた。

「暇だから手伝うよ」
「本当ですか! 丁度ひとがいなくて困っていたんです。じゃあ、こっちの野菜を乱切りにしてもらってもいいですか?」
「うん、いいよ」

 僕は言われた通り野菜を切りながら、隙を見て主の椀に粉末を振り入れた。
 ほんの一振り。
 見た目は何も変わらない。
 これで主は僕を食べることになる。
 僕と主が一つになる。婚姻と同じだよ。

 夕食の時間。
 僕は少し離れたところから主を見ていた。
 主が椀に口をつける。箸を動かす。普通に食べている。
 やった! 成功だ!
 でも、しばらくすると主の顔色が変わった。

「……ん」

 主が額を押さえる。

「主君?」

 隣にいたオオクニヌシが声をかける。

「ちょっと……気持ち悪い」

 主が立ち上がろうとして、ふらついた。

「主君!」
「お頭!」

 あちこちから声が上がる。
 近くにいたオオクニヌシとスクナヒコが主を挟んで様子を見ている。

「おい、大丈夫か」
「顔色が悪いぜ。どう気持ち悪い?」
「うん……なんか、胸のあたりが……」

 主が胸を押さえる。

「おれの部屋に来い。すぐ診てやる」

 スクナヒコが主の腕を取った。でも小さいせいで主を立たせることも出来ない。

「助手として一緒に行こう」

 代わりにオオクニヌシが主を抱き上げた。
 三人が部屋を出て行く。
 僕はその場に立ったまま、よく判らなくなった。
 あれ?
 喜んでくれると思ったのに。
 気持ち悪いって、なんで?

 しばらくして、オオクニヌシが僕の部屋の戸を開いた。声もかけずに。

「アキグイノウシ」

 真っ直ぐ僕に向かって歩いてくる。

「なに? 主は大丈夫?」
「主の食事に何か入れただろ」

 ぎくりとした。

「え、いや、別に」
「嘘をつくな。スクナヒコが調べた。主君の体内に神の霊力が混入している。しかもそれは――――」

 オオクニヌシが僕の腕を掴んだ。

「君の霊力だ」

 ばれた。神だったら気づいちゃうよね。

「あ、うん。そうだけど。でもね、これは――――」
「主君に自分の肉を食わせたのか」

 低い声。怒ってる。
 察しが悪くてイライラするなぁ。

「僕の一部を主に捧げたんだよ! そうすれば主と一つになれるでしょ!」
「......狂っているのか」
「狂ってない! 主が喜ぶと思って!」
「喜ぶわけがないだろう。主君は今、君の霊力を体外に出すために苦しんでいる」

 え。
 どうして受け入れないの?

「…………なんで?」
「独神の身体は人と同じだ。異物が入れば拒絶反応が起きる。君の行いは主君を毒殺しようとしたのと同じだ」

 違う。

「毒じゃないよ! 僕の一部だよ! 主と一つになるための――」
「黙れ」

 オオクニヌシの目が、冷たい。

「なんだよ。僕はイザナギから直接産まれた、いわば兄神なんだぞ。何代も後の血が薄まってるヤツが偉そうに説教できる立場じゃないでしょ」
「いいから!! 主君に二度と近づくな。食事に触れるなんてもってのほかだ。判ったか」

 戸を乱暴に閉めて行ったオオクニヌシを見送って、僕はその場に立ち尽くした。

「…………主、僕を拒否するなんて素直じゃなさ過ぎるよ」







 次の日、主に呼ばれた。
 執務室に入ると、主は机に向かって座っていた。
 顔色はまだ少し悪い。

「アキグイノウシ」

 名前を呼ばれる。
 でも目は合わせてくれない。
 机の上の書類を見たまま。

「……二度としないで」

 静かな声だった。
 怒鳴られるより、ずっと怖い。

「でも主、僕は――」
「二度と、しないで」

 繰り返された。
 今度は少しだけ顔を上げたけど、やっぱり目は合わない。
 今までで一番主が怒ってたかも。
 でも話すならさ、相手にちゃんと目を向けるべきだよ。

「…………」

 結構不機嫌だな。しょうがないここは折れてあげるか。

「……判った」

 今はそう答えるしかないだろう。
 ほんとはこっちからも言いたいことがたくさんある。

 どうして僕を受け入れないの。
 僕を捧げられて喜ばないのはなんで?
 どうすれば良かった?

 気に入らないところは直して、早く僕を受け取ってもらいたい。
 でも……そういう雰囲気では到底なくて、僕は出直すことにした。

「またね主」

 僕は部屋を後にした。
 と、思い出して、もう一度部屋に戻った。

「主! 飴忘れてるよ」

 手を差し出すと、主は飴を投げてよこした。

「……機嫌が悪いからって行儀が悪いよ」







 部屋に戻って、僕は考えた。
 なんで主は怒ったんだろう。
 僕の一部を食べれば、僕と主は一つになれるのに。
 こんなに素敵なことなのに。
 サンキボウは「主サンはお前のことなんか好きじゃない」って言ってた。
 オオクニヌシは「毒殺と同じだ」って言った。
 主は目も合わせてくれなかった。
 でも、違う。
 主は僕のことを想ってくれてる。毎日飴をくれるもん。さっきだって。
 きっとみんなが騒ぐから、仕方なく怒ったふりをしただけだ。
 本当は嬉しかったはず。
 ……でも、次はないって言われちゃったな。
 じゃあ、別の方法を考えないと。
 主を喜ばせる、もっと良い方法。
 主が僕だけを見てくれる方法。
 好きになると考えることが多くて忙しいな。

 考えていると、襖が開いた。

「あら、アキグイノウシ様。一人ですか?」

 ヤオヤオシチが立っていた。
 にこにこと笑っている。

「うん。一人だけど」
「落ち込んでいらっしゃるように見えましたので」

 オシチが部屋に入ってくる。

「別に落ち込んでないよ。ちょっと考え事してただけ」
「主様のことですか?」

 ぎくりとした。

「……なんで判るの」
「だって、アキグイノウシさん、いつも主様のことばかりですもの」

 ヤオヤオシチは僕の隣に座った。

「アキグイノウシさんは、主様に喜んでほしいんですよね」
「うん。でも、今日は失敗しちゃって」
「ええ。見てましたよ、全部。主様、お辛そうでしたね」
「辛そうな演技、上手だよね。どうして素直じゃないんだか」

 ヤヲヤオシチが少し首を傾げる。

「…………神族のやり方では、主様は喜ばないのかもしれませんね」
「え?」
「だって主様は独神ですもの。あえて言うなら私たち人族に近い存在です」

 ヤヲヤオシチがにっこりと笑った。

「人族流のやり方、教えて差し上げましょうか?」
「人族流…………?

 僕は身を乗り出していた。この際種族なんてなんでもいい。
 主が手に入るなら、なんでもやる。

「人族は神族のように強くありませんから、別の方法で想いを伝えるんです」

 ヤヲヤオシチが優しく微笑む。

「例えば……主様に心配してもらう、とか」
「心配?」
「そうです。主様は優しい方ですから、誰かが困っていたら必ず助けに来てくださいます」

 ヤヲヤオシチが僕の手を取った。

「アキグイノウシさんが困っていたら、主様は必ず駆けつけてくださいますよ」
「でも、どうやって困ればいいの?」
「火をつけるんです」

 間髪入れずに言った。

「火?」
「ええ。火事を起こせば、主様が心配して来てくださいます。そうすれば主様を独占できますよ」

 あり得る。主なら絶対に心配して、僕のところに来てくれる!
 そうすれば二人きりにもなれる!

「良いけど、どこに火をつけるのがいいんだろう?」
「そうですねぇ……」

 ヤヲヤオシチが部屋を見回す。
 主から貰った物で溢れた八百万界に一つだけの部屋を。

「ここがいいと思います。アキグイノウシさんのお部屋なら、主様も真っ先に駆けつけてくださいますよ」
「え!? 嬉しいけど……でも」

 主からもらった耳飾り。
 主が使っていた筆。
 主がくれた飴が入っていた外袋。
 全部、主との思い出。

 これが燃えるのはちょっとなぁ……。

「肉を切らせて骨を断つ、という言葉はご存じでしょう? ここにあるのは思い出でしかありませんが、これらと引き換えに主様との未来が手に入るんです。……どちらが素敵ですか?」
「…………判った。少し一人で考えて見るよ。ありがとう」

 ヤヲヤオシチを帰らせ、僕は思い出の品々を見渡した。
 何かを得るために、何かを捧げる。
 それを『アキグイノウシ』は誰よりも知っている。







 火は思ったより早く広がった。
 襖が、柱が、畳が、次々と燃えていく。
 熱い。
 煙が目に染みる。
 でも、もうすぐ主が来る。
 心配して、僕を助けに来てくれる。

「火事だ!!」
「水を持って来い!!」

 外で叫び声が聞こえる。
 バタバタと足音。
 そして、襖が開いた。

「アキグイノウシ!」

 主だ!
 来てくれた!

「主!」

 僕は嬉しくて駆け寄ろうとした。
 でも、主は僕を見ていなかった。
 部屋の中を見回して、

「延焼を防いで! 隣の部屋に燃え移る前に!」

 と叫んでいる。

「主、僕――」
「アキグイノウシは外に出て! 危ないから!」

 主に押し出されて、僕は廊下に立たされた。
 主は部屋の中で火伏せ術を発動している。他の英傑たちも主の動きに合わせて消火活動をしている。
 僕のことなんか見てくれない。
 あれ?
 オシチは「主様が心配して来てくださる」って言ってたのに。
 来てくれたけど、僕じゃなくて火を心配してる。
 違う。
 こんなはずじゃ。

「……良かったですね」

 後ろで声がした。
 ヤヲヤオシチが立っている。

「主様が来てくださいましたよ」

 でもヤヲヤオシチの笑顔は、さっきまでと違った。

「ありがとうございます。自ら処分して下さって」

 僕は部屋を見た。
 火に包まれている。
 耳飾り。
 筆。
 包み紙。
 全部、燃えてる。

「あ……」

 主との思い出が、全部。

「ちょっと待って! あれ! あれは!」

 僕が部屋に戻ろうとすると、誰かに羽交い締めにされた。

「バカ! 入るな!」

 シュテンドウジだ。

「離して! 僕の! 僕のが!」

 でも、もう遅い。
 部屋の中のもの、全部燃えてしまった。
 主は汗を拭いながら、

「なんとか延焼は防げたね」

 と言った。
 僕を見て、

「アキグイノウシ、怪我はない?」

 と聞いてくる。

「……うん」

 僕は力なく答えた。
 主は少しだけ眉を寄せて、

「火の始末には気をつけてね」

 と言って、行ってしまった。
 他の英傑たちも、ぞろぞろと去っていく。
 僕は一人、燃え跡の前に立っていた。

 僕は、対価に何を得たんだ…………?







 数刻後に僕は主に呼び出された。
 執務室に入ると、主は立ったまま僕を待っていた。
 隣にはイザナギ――父上もいる。

「アキグイノウシ」

 主が僕の名を呼ぶ。
 今度は目を合わせてくれた。
 でもその目は、冷たかった。

「さっきの火事、あなたが起こしたんでしょ」

 疑問形だけど、質問じゃない。
 もう判ってる。

「……うん」

 隠しても仕方ない。

「なんで?」
「主が来てくれるって聞いたから」

 正直に答えた。
 主は目を閉じて、深く息を吸った。
 そして吐いた。

「……もういい。今後はイザナギの一部に戻りなさい」

 主が父上を見る。
 父上は僕を見て、肩をすくめた。

「主の命令だ。大人しく従え」
「待って! 僕、別に悪いことしてないよ! 主に会いたかっただけで――」
「会いたいからって、自分の肉を無断で食べさせる? 火をつける?」

 主の声が、少し大きくなった。

「……それは」

 全然おかしくないよね……?
 そんなことで怒ってるの?
 え?
 え??

「アキグイノウシ。あなたは供物がないと弱るって言ったよね。だから私は毎日飴を用意してた」

 主が一歩近づく。

「でもそれは、あなたのためであって、あなたが好きだからじゃない」

 胸が、ずきんとした。

「主は……僕のこと、好きじゃないの?」
「あなたは私の部下。それ以上でも以下でもない」

 主がきっぱりと言い切った。

「私、もう……疲れたの」

 父上が僕の腕を掴んだ。

「行くぞ」
「待って! 主!」

 振り返ろうとしたけど、父上の力は強い。
 急速に身体が紙みたいにくしゃくしゃになって、縮んでいってる。

「主ー!!」

 叫んでも、主は振り返らなかった。







 父上の冠の中は、暗かった。なにも見えない。
 出られない。

「主ー! 主ー!」

 何度叫んでも、返事はない。

「うるさい」

 聞こえるのは父上の声だけ。

「静かにしろ。主は忙しいのだ」
「でも僕――」
「オマエのことなど気にしておらん。諦めろ」

 父上は冷たい。
 でも、諦めない。
 僕は主が好きだ。
 主が僕のこと好きじゃなくても、僕は主が好き。
 いつか、また外に出られる日が来る。
 その時は、もっと上手に主に想いを伝えよう。

「主ー! 待っててねー!」

 僕の声は、冠の中で響くだけだった。







 独神はぐったりとしていた。
 ひとの身体ほどあるまんじゅうのような座布団に身体を埋めて天井を見上げている。

「火ぃはまずいって…………。うち木造だってば…………」

 突然の火災騒動で仮眠中に起こされ、独神は眠そうな顔で仕事をし、時にはうっかり目を閉じて船をこいだ。
 火災騒動の真相をヤヲヤオシチや見張りたちから耳にし早急に対処した。
 先日の異物混入事件もあって、アキグイノウシをイザナギの冠に戻すと決めたのだ。

「やっと静かになった…………」

 独神が安堵の息を吐く。

「儂の冠が……うるさい」

 イザナギが頭を押さえて現れた。

「ずっとこれか」
「申し訳ないけど我慢して」

 独神が即答した。

「駄目なときは昇天させる。もう私じゃ扱いきれない」

 独神は頭を押さえた。

 アキグイノウシがどんな神であれ、受け入れていこうと思っていた。
 そのためにイザナギに何度も話を聞き、書物も読んだ。知識を入れたがそれでも手に負えなかった。

 自分が苦労するだけならまだ付き合っていけただろう。
 だが、アキグイノウシが本殿に現れてから、英傑たちの様子が変わっていった。
 日々頭を悩ませる独神を気遣い、殺気立つようになった。
 アキグイノウシ本人に害を与えるものもいれば、遠回しに陥れる者も見受けられた。

 せっかく三種族で大きな問題もなく過ごせていたのに、これは良くない傾向だと捉えていた。
 アキグイノウシが反省して変わってくれるのが一番だが、そううまくはいかない。

 本来規則を重視し、独神の命令には従う者たちも、罰則を恐れず禁止事項を行う。
 手綱を握れていないことは大きな問題で、今後の悪霊討伐に大きな影響が出るのは明白だった。

「アキグイノウシは飽食の神。なんでも食らうが、特に穢れを好む。だから嫌悪を一身に集める。蟻地獄のようにな」

 大きな座布団に頭を埋める独神に、イザナギが柔らかな声色で撫でた。

「我が子が苦労をかけたな」

 遠くから、ないはずの声が聞こえる。

「主ー、ちょうだい! 主ー、ちょうだい!」

 独神は耳を塞ぎ続けた。








かんそう

 元々はwaveboxにて、
『モブ英傑になって独神にガチ恋して、独神ガチ勢の英傑に独神にあてた恋文を燃やされたり邪魔されたりしたい』
 という声をいただいて作り始めたもの。

 ただ、書いている間に予定が大きく変わり、最初の要望とは少し違う物が出来てしまった。

 ヘイトタンクをオリ英傑に設定すれば、誰も傷つかないしなにやってもオッケーと思って、なかなか描けない英傑が怒った姿を書くことが出来たのはラッキーだと思った。
 (ただモブを書くつもりが、設定的にモブではなくなって申し訳ない。読む人がヘイトタンクに心置きなく「ざまあ」できるようにと設定をつけたことが敗因)

 ヌラがしれっといいところを持っていくところとか、嫌なヤツでもフラットに扱おうとしてでも独神に害があると判断したらしっかり決まりを破って武力行使にでるサンキボウや、自然な動作でお仕置きするミコシニュウドウとか。
 コタロウの性格が悪いところはいつものお決まり。
 あと食事の時も一緒にいるんだ……っていうオオクニヌシとスクナヒコとか。
 別の交友関係グループがあるけれど、いたら一緒に食うかーって感じ。今回は主もいたからどっちも主狙いで隣を占拠した。
 おかげですぐに対処出来たので、独神は運がいい。
 あとオシチの放火教唆。
 自分が利益を得る時だけ放火かも……と思ったけど、追い詰めていけば他人に放火を促すのもありだなと思って教唆させた。
 毎日主から物を貰って、しかもいつも上から目線で遠慮がなくて。
 オシチは、めーっちゃアキグイ嫌いだったと思う。
 放火はダメだと言われてるから頑張って抑えていたけど、自分の一部を食べさせるっていう羨ましいことを先んじてしたから限界がきた。
 ガシャドクロだけは、飽食の神の性が少しだけ理解できていて、今回優しくしたんだけど駄目だったね。

 他にも怖がりなシラヌイが仮にも仲間であるモブを攻撃したりとか、タマモが謀略で排除しようとするところか、サナダユキムラの虎の面が出ちゃうとか、チヨメがさくっと忍っぽく刺しちゃうとか、カミキリが全身の毛を切り取るとか、ハチカヅキヒメの幸運が相手の不運を呼び起こすとか、ハクリュウがガチギレして竜の姿になってパックリ食べちゃうとか、オオワタツミがしれっと海の藻屑にしてしまうとか、クダンが排除の策を見つけるために悪い未来を見よう見ようとしてみるとか、ダイダラボッチがシンプルに踏もうとしたりとか、オダノブナガがうっかり本殿を全焼させたりとか、ツチグモが罠を張って毎回こかせているとか、い~ろいろあったけど、全部は入りきらないので一部だけ。

 小説という形を取っている以上、ストーリー展開はいるので泣く泣くボツ。


 英傑たちは主のため、共同生活のためにいい子ちゃんなだけで、わりとなんでもありだと思う。
 なにかを殺したり苦しめたりすることにへの抵抗が少ない。

 自分のために、推しが手段を選ばない行動を取ることを好きな夢女はたくさんいると思うので、各自いっぱい妄想して下さい。

 暴力系がいい?
 精神的に追い詰める系がいい?
 好感度が下がるように告げ口するのがいい?
 しれっと排除がいい?
 モブがクソであることを口実に僕が守ってあげるって言ってどんな時でもついて行く権利を得るしたたかなのがいい?
 討伐中に不慮の事故を起こすのがいい?
 ぐっと堪えて独神に悟られないように守るのがいい?
 いっそ手を出される前に独神を手込めにするのがいい?

 どんなものがすきかな?

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