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今回のコンセプト。テーマ。
『ヤンデレ×ヤンデレ』
最終的に
微ヤンデレ×ヤンデレ×ヤンデレ×ちょいヤンデレ
これはツチグモ、頼光、ヨリトモ、独神の順番
双方の愛情が大きい+判りやすいので、病みにくいヤンデレカップル。
通常なら重いとされる、監視や牽制や嫉妬を愛情を感じる行為と捉えているので、お互いに困っていない。
テーマは復讐と愛なので一見重厚だが、今回二人と恋愛脳だったのでさらっと超えてしまった。
そう、これはラブコメ。
「愛があればなんでも解決」
◇メインキャラ解説
・独神
ツチグモと出会ってから順風満帆。
思い切り甘えられるし、独神仕事はやる気が出るし、サスケと組んで大抵のことは思い通りになるし、一緒に作業するミチザネ・ショウトクタイシとも前より接しやすくなって、兄とも納得いく関係になれて、邪魔者はいなくて、全てがハッピーハッピー。
……とガチで思っている狂人。
独神視点を読めば判るが村は消滅させるし、気に入らない英傑は飛ばすし、ツチグモに殺されようとしたり、『恋人の為』という免罪符でやりたい放題しているスーパー自己中。
自分の意思を無視して、殺戮を繰り返した兄と同じことをしていることには気付いていない。
恋人の平穏を守ったことに誇りすらある。
好きになると、迷わないタイプ。
束縛されたい欲が強いが、束縛欲も強い。
自分中心の愛。「ツチグモのため」と言いながら、実際は「ツチグモを失いたくない自分のため」。
復讐に燃えてた元人殺しの妖怪に「殺そうと思い立つ前に、兄貴と話し合いしろよ」って諭されるレベルでコミュニケーションレベルは低い。
幼少期にまともな人付き合いを学べなかったこと、独神の体質が原因である。
だがまともな幼少期ではなかったおかげで、ツチグモが監視したり、縛ったりすることを愛情表現と捉えている。
ウルトラハッピーちゃん。
・ツチグモ
原作ゲームの台詞を見て、頼られたいひと、愛情を感じたいひとと思ったので、
独神→→→→→ツチグモ→→→独神
くらい、自分を溺愛する独神を配置してみた、今回。
ツチグモも執着は凄いが、独神の執着の方が遙かに上。
…………って、設定で書いてみたけどどうだった?
書いてる本人は、この組み合わせで書くのはとても楽しかった。
片思いしているツチグモも好きだけど、両想いになって幸せそうにしているツチグモ、イイネ!
そして、この作品のツチグモについて。
デカい愛情をぶつけると、わりと大人で常識的になった。
人殺しは余裕なのに「独神は殺しちゃいけない」「他人も殺さない方ができれば良い」「本当は糸で独神を縛りたい、けど我慢」等、思想はアレだけど相手の立場を考えてブレーキをかけられる理性的な妖。
物理的(糸)ではガンガン縛るが、独神の心は割と寛容に見守って縛らない(ようにしているが、実際はそこそこ制限している。独神は喜んで受け入れるので気付いていない)
好きになると、しっかり迷うタイプ。
束縛欲は強いが、独神の執務に影響が出ないよう 出 来 る だ け 常識の範囲に収めている。
相手中心の愛。
仕事とはいえ、独神はいつも人に囲まれていて、自分と過ごす時間は正直短い。兄貴と独神の親密さも気になってしまう。
そんな引け目や負い目を常に感じているが、独神の前でかっこ悪いところは見せたくないので、こうした気持ちはなかなか口に出せずにいる。
言葉にできない感情が物理的な糸として現れ、独神を監視し縛っていないと不安になってしまう。
殆ど疑わなくなるのは数年付き合ってから。
平和になってからかも。
ちょっとした設定で、手先が器用だと思う。指使いが上手い。糸を操ることから感覚は敏感だと思う。
・ツチグモ×独神
ツチグモの迷いを断ち切ってくれる独神がいて、
独神の暴走を止めてくれるツチグモがいる。
凸凹が合致している二人。
ツチグモ:「主が嫌がることはしたくない」
独神:「ツチグモが離れていくのが嫌だから何でもする」
愛の方向は違う二人。
独神:「ねえ、この作戦どう思う?」
ツチグモ:「やめとけ。人死にが出る」
独神:「でも効率的だよ?」
ツチグモ:「主は時々怖いこと考えるな……」
独神:「あはっ、冗談だって」
ツチグモ:「(嘘だな)」
ツチグモの本能が、こんな女に関わるべきではないと警告したのに、それを無視した。
その関わるべきでない、という答え合わせが独神編。
過去はアレだわ、むちゃくちゃだわ、やりたい放題、付き合って良い要素がない。
でもツチグモはこの先一緒にいることを選んだ。
めっちゃ器の大きいひと。愛が深いね。後悔しないといいね。
おかげで、イカれた独神も少しずつは変わっている。全部ではないが。
愛情で人は変わるんだよ。変えられるんだよ。
ツチグモも独神の影響で理性的になっている。いなかったら享楽の為に殺しまくってるはた迷惑な妖のまま。
そして二人とも道徳観がちゃんとしていないので、相手の危険な面も含めて受け入れられ、衝突がなくお互いに自然体でいられる。
良い出会いをしたふたり。
「ホウレンソウ」さえしていれば、よっぽどのことは起きない。
だから独神が暗躍すればするほど、ツチグモが勝手に手を汚せば汚すほど、喧嘩ルートへ歩を進めることになる。
話し合うことの大切さは独神編で書いたつもり。
◇サブキャラ解説
・ショウトクタイシ&ミチザネ
エピソードは入れなかったが、理性的に動く二人は協力して独神のサポートをしていた。仕事面だけでなく、独神が精神的に参っている時なども支えている。二人は密に話し合い、バランスよく役割分担していた。ギスギスしすぎると仕事が回らないので、空気を読んで仲裁するのがショウトクタイシ。ミチザネは元来嫌味な男だが、それを武器に使い分けている。
独神が英傑を引き寄せやすく、好かれやすいという欠点を見抜いて距離を保つようにしていた。ミチザネは独神に惑わされない為にも意図的に冷たい態度を崩さなかった。独神とツチグモが気づいていないが、独神は二人と過ごす時間が長いのでしょっちゅう隙を見せている。好かれるようなことを無自覚にしているので、二人はお互いに牽制して勘違いしないようにしている。溜まってくると二人で飲んで、独神の悪いところ(無自覚で可愛げがあるところ)を愚痴っている。
例。
独神が英傑にアドバイスされて髪の結い方を変えた。それだけでイメージががらっと変わり、そのギャップに惹かれる英傑が多かったので、ミチザネが「独神なら普段華美なものは控えろ」と注意して、地味っぽくさせた。独神はまっとうな助言だと受け取っているが、二人とも可愛いと思ったから変えさせたのが真実。
ツチグモと付き合い始めてからは「ツチグモが嫉妬する」の一言で行動を改めてくれるので物凄く楽。ツチグモには感謝している。だがどうやらツチグモが余計なことを独神に言ったせいで、独神が二人に甘い顔をするようになったのは迷惑だと本気でキレている。
二人は英傑のまとめ役としての独神には一目置いている。書物も報告も些細な会話も全部記憶している独神を生き字引として使っている。
・サルトビサスケ
独神と個人契約を結んだ忍。サスケは里の今後のために独神と繋がりを欲していた。サスケも独神が厄介な特性を持つことを理解している。
独神がサスケだけを特別に頼りにするため、最近独神に好意を抱きそうになっている。しかしそれに流されず、この状況を感情を殺す修行だと捉え、表面上は冷静に振る舞っている真面目でストイックな忍。
ツチグモのお陰で独神の身辺警備の質が上がったことは喜んでいる。だがツチグモが余計なことを独神に言ったせいで、独神がサスケに甘い顔をするようになったのは迷惑だと本気でキレている。
サスケの独神への感情は主従であり、傍観者。独神が楽しそうにしたり、悪巧みをしている様子を眺めているのをなんだかんだ楽しんでいる。忍であるサスケは一番近い所で見続けられる特等席にいる。
・ヨリトモ
有能なコンプレックス男。
『二番目の男』
ウシワカマルのような武勇はなく。
独神のような統率力はなく。
独神の兄(頼光)のような狂う程の愛もなく。
ツチグモのように独神を手に入れられず。
ない×ない×ない×ない
他の英傑と同じように、独神を好きになった(最低限の好意であり=恋愛ではない)。頼光の狂気的な愛に触れて、そっちに目覚めた。自分に酔っているだけで、独神を好きかというと純度はとても低い。
出した理由は、ツチグモ×独神をよく思っていない存在が欲しかったから。更に復讐相手の頼光と関係があるということで採用。
・頼光
ツチグモが執着している相手を独神の身内にしたろw
……そんな軽いノリで出した。ゲームキャラではないし、作り込んでもツチグモ×独神の軸がブレるし、書き手の自己満足でしかないので敢えて考えていない。よって解説はない。
独神と会わない約束だが文通はしている。独神からの手紙はツチグモの惚気オンリー、兄からの手紙は戦況報告。最後に一言、小言が入る。
なお、独神は手紙を包み隠さずツチグモに見せている。それによってツチグモは自分への惚気を強制的に読まされる羞恥プレイと化している。だが見ないと見ないで中が気になるので見るしかない。とにかく恥ずかしい。
◇ちょっとだけ言いたい。ストーリーのこと。
・ツチグモと独神が仲直り?をするシーン。
「朝の蜘蛛は福が来る、夜の蜘蛛は盗人が来る」
という言葉があるんですが、朝の蜘蛛は縁起物と考えられています。
だからあのシーンは日中なんです。
独神の立場からすると、彼が幸福を運んできてくれているので。
・明かされていないもの
いっぱいあるけど、別にいっか。と思ってそのまま。
彼らはまだ全てが解決したわけではなく、今後も事件は起こります。
独神は兄の死のお陰で独神になったことを知らない。
ウシワカマルのことも触れていない。
独神自身もまだ秘密がある。
あーだ、こーだあるけれども、二人はなんとかやっていくんじゃないのかなと思う。
出来るだけの下地は用意したから。
そんじゃけ。
◇取るに足らないふり~はんどな小話
---1---
「俺といて、本当にいいのか?」
ツチグモが弱気なことを言うと、独神が体当たりしてきて押し倒す。
「それ。どういう意味?」
いつもなら痛くならないようツチグモの身体に乗らないようにしているのに、今は腹の上に片膝を置いている。今は体重をかけていないが、発言によっては思い切り押し込む気だろう。
「迷惑じゃねぇかって思っただけだ。悪いかよ」
「じゃあ思わないで。私は今がいいの」
鼻で笑ったツチグモは足を下ろせと軽く叩いた。独神は素直に下ろす。
抱きしめる。独神を。
「主に勝てる気がしねぇ……」
「飼って良いんだよ!」
こいつまた変なこと思ってるなと呆れながらもそのまま腕を回している。
「(こうして主といると不安になりようがねぇんだよな)」
懸念材料がないとは言えない。だが、独神の愛情表現に疑いの余地がない。
「俺で困ってはねえんだよな?」
「ないよ。ないなーい。……誰かに言われたの?」
心配そうに独神がツチグモの頬を撫でた。
少し傷跡が膨らんでいる。
「いや。時折信じられなくなる。俺が独神と、ってな」
ツチグモは時々、そういう自分と独神の違いが気になる。
どこだか知らない町や村の人からも信頼され、崇められている立場の独神。
通常ならば立場ある者には反感を覚えるはずだが、独神には素直に従える。
ただ、少しだけ、寂しくなる。
「……私も、ほんの時々、私で良いのかなって思わなくもないよ」
と、教えてくれる独神。
「でも私ほどツチグモの為になんでもできる人はいないと思うから、私で良いんじゃない?」
自信あふれる言葉に強さを感じる。
---2---
主といると馬鹿になる、と思っているツチグモ。
ツチグモといるとまともになる、と思っている独神。
---3---
『悪びれもない。私は知っているぞ。毎晩逢瀬を重ねていることを。部屋の前で耳をすませば睦み合う声が聞こえている。破廉恥な。』
ヨリトモ編にはそのような地の文がある。
おかしいのは『部屋の前で耳をすませば』
普通ね、耳をすまさない。特に仕える主が恋人といると知っているなら。
で、普通の忠臣ならどうするのかってパターンが下記↓
二人が結ばれている最中、一番気持ちいい時に、廊下で不審な音が鳴る。
二人ともぴたっと止まる。
独神は急いで服を身に着け、ツチグモは黙る。ふぅーっと長く息を吐きながら腕で両目を押さえた。
服を綺麗にした独神は、部屋を出て会いに行く。
「お待たせしてごめんなさい」
そこにいたのはショウトクタイシで、ずっと下を向いている。
「お休み中申し訳御座いません。急ぎの報告がありまして」
報告の中には、ツチグモにも聞かないといけない事柄もあった。
「ツチグモ、は……」(奥にいるけど言わない)
「私は外で待たせて頂きます」
ショウトクタイシは外に出る。独神は奥へ引っ込みツチグモに確認してすぐ戻ると、ショウトクタイシは離れたところに立っていた。
「大丈夫。行けるって」
「ありがとうございます。報告は以上になります。今夜はもうここには来ません。遅くに大変失礼しました」
さっといなくなる。風のよう。
独神は部屋に戻る。ツチグモは不機嫌。
「ショウトクタイシがごめん。って。もう今日はこないよって」
「くそっ。一番いい所で冷めちまった」
「私も頭切り替わっちゃった。わはは」
「主以外考えさせんなよ……チッ」
……以上が忠臣の対応。
そもそもは夜間は独神の部屋には近づかないようにする。
どうしても用がある時は、こんな感じ。
よって、ヨリトモの行動が忠義ではなく、嫉妬での行動と判る。破廉恥なのはどっちだ。
---4---
「独神様お休みになられてはどうですか」
「あと少ししてからにする。ありがと」
と言って、独神は基本的に休まない。
見かねたショウトクタイシは、
「ではツチグモ様をお連れしますか?」
独神はびくりと身体を震わせ、手を止めた。
「ツチグモはいいよ。集中力が切れる」
「好都合です。呼んできますね」
「え、なんで」
呼んで来る。
嫌そうなツチグモ。
「子守りじゃねぇか」
「はい。お願いします」
独神も嫌そう。
「迷惑かけてごめん。来て早々だけど帰って」
「黙ってろ」
座布団を並べ、横にさせて抑えつける。力業。
「い、いやだ。やめて。落ち着かないしみっともないしやだ」
暴れていたが、ツチグモが撫でていると寝た。疲れすぎているので秒で寝られる
「ここではなく、部屋連れて行って寝かせた方がいいだろ」
「そうしたいのは山々ですが、それだと独神様は休んだことへの罪悪感がお強いので。来て頂いてありがとうございます。助かりました」
「まあ俺も呼ばれる方がマシではあるが……。そっちも嫌じゃねぇか?」
「休めと言うのに一切休まず、俺の手を何度も煩わせる方がよっぽど非効率的で不快だ」
とミチザネ。言い方がキツイのは誰にでも。
「俺の言う事は聞かずとも、お前の言うことならば聞くのだ。ならばお前に任せる方が効率がいい」
そうかよと思いながら、ツチグモは垂れそうになっている涎を拭いてやった。
なんだかんだ、独神には自分だ、と扱われるのは嫌いじゃない。
独神が自分には安心して無防備になってくれるというのも、実はすごく嬉しい。
---5---
「はぁああああ」
飲み屋でクソデカ溜息ミチザネ。
「……うちの馬鹿な主殿は何故俺にあのような笑顔を向けだした? おかしいだろう」
「はは。そうですね……」
死にかけた顔をするショウトクタイシ。もう五杯は飲んだ。
「いつもありがとう。ですか。何か振りかえるようなことがあったんでしょうね」
「振りかえってばかりだろう。過去から学んでばかりの主殿は」
キレキレ。
「大方ツチグモ様がなにか言ったのでしょうね。でなければ、私たちと距離を保ってきた独神様があんなに無防備に感情を出すとは思えません。
舌打ちミチザネ。
「まったく余計なことを。こちらがどれだけ気を遣っているのか。享受するだけの者には到底判らぬのだろうよ」
「そうですね。あの方はただその身に受け続ければいいだけですから」
はぁ。と溜息をつく。ショウトクタイシ。
「(言葉にしなくとも、主殿の信頼は判っている。今更。…………今更だろう。なあ)」
言葉にしないと、と思われたことに傷ついている。
「(独神様から一時的な報酬を頂くためにやっているのではないのに。……ですが、少しは信用に足るものと思えるようになりましたか?)」
世界が広がったことを喜んでもいる。
「このまま放っておいたら、余計なことをされかねない。あいつを抱きこまないか?」
「良いと思いますよ。ツチグモ様は独神様がいないところでは普通の方ですから」
「はっ。愛に狂うか。馬鹿馬鹿しい」
「(……突いたら逆上されそうですね)」
────サスケの場合。
「はあ」
困る。
何故笑顔を俺に向ける。そんなの恋人にしておけば良いだろう。
頭が判らない。
俺達は距離を保てていたではないか。
頭もツチグモ以外を真には必要としていない。
それで良かった。
直感で判る。頭の好意は俺の全てを滅ぼす。
ツチグモが何故平気なのか判らない。
……俺は、ただ頭の冷静な主としての手腕に惚れただけなのに。
頭自身には、何もないと言うのに。
「はあ」
一癖も二癖もあるな、頭は。
上に立つ者はそんなものか……。
---6---
サスケと組んだ独神。
時々願いを叶えるようにしている。
「なにかないの?」
「ない」
「本当にないの? 防衛用の城が欲しいとか、遊園地建てたいとか」
「忍ばない忍がいてどうする」
失言だと思ったのか、独神がじっとみると目を逸らした。
爆炎のあれや瓢箪を掲げるものを思い出した事だろう。
「まぁいいけどー? 外堀埋めたり、掌握するものは時間がかかるから早めに教えてよね」
「承知した」
独神はむすっとした。
「ねえ。なんでもいいから言ってよ。無報酬で尽くすなんて……恋人じゃないんだから」
サスケはああと思った。
独神にとって貸し借りがないのはツチグモだけで、他は負い目のない関係が好みなのだ。
「地位ある者に仕えている時点で俺の目的は達している。それに伊賀者は俺ほど頭に重用されていないという現状。十分だ」
独神はこれを聞きながらツチグモは私の地位に魅力を感じてなくて凄いなーと思っている。
サスケはなんとかこの状況を乗り越えようとして必死。
「サスケ。下らないことや小さいことでもいいから、欲しいもの言ってね。日常のものだと消えものが良いな。物はツチグモだけにしたいから」
さらっと、ツチグモの名を入れてくる。無自覚に。
サスケは安堵する。
「どうしてもと言うなら、もっと上手い采配で俺を使え」
「……言うじゃない。まあ頑張りますよ。でも実感ないんだよねえそういうの。やった感じしないじゃん」
「頭」
「ん?」
「蜘蛛が動いている。怪しいと思っても探ってやるな。知らないでいろ」
ぱあああと明るくなる独神。満面の笑み。ツチグモにしか見せない笑顔で。
「本当!? ツチグモ何してくれるんだろ。楽しみ!! じゃあ知らない振りしてあげなきゃ!! ありがとうサスケ!!」
あ、行かなきゃじゃあね。と、言って、ルンルンで歩いて行く独神。
それをじっと見ているサスケ。
独神が一回振り返ると、まだ見ているサスケと目が合った。「ありがと!」と口だけで言って。満面の笑み。
サスケはそれになんとも言えない感情を抱く。
サスケは多分、楽しそうにしている独神のことは好意的に見ていて、それがツチグモが関係しないと現れないと判っている。
傍観者でいることがサスケの一番心地良い距離感。
だが、トップとして有力な独神についていきたいというのが一番の動機であることは変わらない(重要)(恋愛にはならない)
---7---
「え~~~~!! ツチグモを遠征に出すの!?」
独神は嫌な顔をした。
「広範囲の索敵は使えるからな」
「え〜」
嫌だけど、とりあえずツチグモに相談する。
「行ってやってもいいぞ」
「なんで!!!」
「やってほしいんじゃねぇのかよ!」
「そうだけど」
「行けば主が楽になるだろ」
「うーん。……判ったぁ」
「頼んでおいて渋々言うなよ」
数日いなかったツチグモ。
独神は表面上は普通だったが、部屋に帰ると突っ伏して寝てまた起きて働く社畜生活。
ツチグモが帰ってきたら、独神は仕事をかなぐり捨ててツチグモにひっつきもっつき。
人前でも抱き着くところから始まり、ツチグモを座らせてその膝の間に座ったりする。ツチグモの腕を取って自分を抱くように腕を回させる。その上から更に自分の腕でツチグモの腕を抱きしめる。
周囲が注意しても聞かない。
ツチグモは、駄目になる独神に若干喜びながらも、主の威厳が著しく低下するのも見ていられないので、こっそり耳打ちする。
「夜。楽しみにしてろ」
それだけで赤くなった独神はツチグモをいそいそと放して、真面目に仕事をする。
「(猛獣使い……)」
ミチザネとショウトクタイシはそう思った。
---8---
独神は自分を隠さなくなってきた。だから以前とは違い我儘と思われる行動も増えていく。それを御せるのはツチグモ。
だったら、とショウトクタイシは独神に聞いた。
「ツチグモ様にお伽番になってもらってはどうですか」
すると独神「…………」としばらく沈黙し、そして答えた。
「ずっとベタベタするから駄目だと思う。さすがに私でもそれはまずいと判るよ?」
【完】
---9---
「働き方改革をすべきだと思う」
「……どうしました?」
「一番上の人間が頭も体も使い過ぎて倒れるって、よくないなって。そんな背中を見せていると結局下についている人たちも倒れるまで働くでしょう? そんな生活長く続かないし、有能な人を失っていくんじゃないかって」
「珍しくまともなことを言うな」
雑談として付き合うミチザネとショウトクタイシ。
「住人との連携を増やさない? 国衙を置いてたの覚えてるでしょ? あれを復活させていく方が良いと思う。そのあたりミチザネ詳しいでしょ」
「国司として働いたが、国司の権力を高めたことでマサカドのような者が現れたり、武士団を形成して、中央では抑えきれなくなっただろう」
「でも今、そういうひとたちがここに集まってるでしょ? それぞれの土地に戻らせたら?」
「独神様は? 警護はどうします」
「……神代八傑だけ置く?」
「…………嫌な予感がしたのはミチザネ様も同じですよね?」
「ああ。同じだろう」
「あいつら絶対私たちが行ってるような、こんな地味なチマチマした作業しないだろ。……ってこと?」
二人は肯定した。
「じゃあ、ミチザネとショウトクタイシは私といてよ。私もせっかく三人で分担出来ているのに、今から変えるのは大変だよ」
「俺たちがいなくなっただけで、滞ってはいけないだろう。他の奴らにも出来るよう整えるべきだが」
「じゃあそういう教育もしていかないと駄目じゃない? でもそこに英傑を配置すると、討伐への投入数が少なくなるから…………」
部屋の外。柱を背もたれにしゃがんでいるツチグモ。
「(真面目な話すぎて入るに入れねぇな)」
普段は口煩い奴と腹の底が判らない奴との認識でしかないが、三人が真面目にやると真面目なのである。真面目だから。
ちょっと気を遣うツチグモの図。
---10---
「ヨリミツさま、お手紙ですよ」
宿屋の娘がヨリミツに手紙を渡した。
「すまない。ありがとう」
宿屋の娘ははにかんだ。
「あの。いつも同じ方から手紙を頂いていますよね?」
誰ですか。と聞きたいのを抑えているのが見え見えだった。
ヨリミツは手紙で口元を隠した。
「恋人だよ。……俺の一方的な」
宿屋の娘は怪訝そうにしたが、ヨリミツには想い人がいるのだとそう思って小さな恋は散った。
「(俺はいつまでも待つ)」
---11---
ツチグモと付き合って、独神は見えていた景色が変わっていく。
世界はそこまで敵じゃないのではないかと思うようになる。
その流れで、慣れてきた独神が仕事部屋で昼寝しようとする。
二人は「まずい」と即座に思った。
「独神様、仮眠用に場所を開けました。衝立があるこちらへ」
「ありがとう。少し寝たら起きるけど、起きなかったら起こして」
いつも疲れているので気絶するように寝る。
「最近の主殿なら、部屋に行かせた方が良かったんじゃないか」
「そうですね。ここにいる意味もあまり」
起こしてと簡単に言うが、起こす方も大変なのである。
「矢で刺すか」
「いけませんよ。せめて弓でつつきましょう」
「面倒な。声で起きればいいが」
衝立に向かって声をかけたら独神はさっと起きた。
「少しスッキリした。頑張るね」
この時はほっとした。
が、この成功体験から、独神は見えないところで寝るなら迷惑じゃないと考えるようになり、平気で寝るようになる。
多少の小言は言ったが聞かなかったので、二人ともほうっておくことにした。
独神が少しずつ世界に対して心を開いてきていることを感じていたから。
昼寝中にツチグモが来た場合。
「良かった! 独神様を起こしていただけませんか」
「そんなの貴様らが起こ、」
「本当にそれで良いんだな?」
ミチザネに強く言われ、ツチグモも気付いた。
「……そういうことか。さっきのは俺が悪かった」
近い距離が許されているツチグモは、他の者とは違って衝立の内側へ行ける。
寝ている独神を揺り動かす。
「あれーつちぐもだぁ。んふふ、嬉しい。すき」
ツチグモの首に腕を回して、軽く口付ける。
「部屋じゃねえよ」
「……」
独神は黙って起き上がる。
「…………ショウトクタイシとミチザネは?」
「いる」
頭を抱える独神。身だしなみを整えて出てくる。
「二人ともごめんなさい。はしたないところ見せて」
「すぐやれ」
「喜んで!」
恥ずかしさもあって即座に仕事を始める。
ツチグモは独神の耳に手をやって、コソコソと尋ねる。
「……やれるのか? 休んでもいいぞ」
独神もツチグモの耳に手をあててコソコソと。
「大丈夫。ありがと。やさしいね」
ニコッとする。ツチグモはほっとする。
「ベタベタするのは終わってからにしろ。ツチグモ殿。協力には感謝するがお引き取り願おうか」
「チッ。判ったよ。……あとでな」
ツチグモは去る。
「独神様」
「はい!!」
この流れでショウトクタイシにも怒られると思った独神。
「……ふふ。頑張って下さいね」
「勿論です!!」
独神、真面目に仕事を始める。
独神と英傑。という関係でしかなかったものが、ツチグモの存在で独神が素の個人を出すようになる。
ツチグモも独神の周囲の環境を受け入れて行こうとしている。そんなの貴様らが起こせばいい、なんて言葉が出るのもこいつらは独神のことをそういう目で見ていないし、そういうことをしないだろう、という潜在的信頼によるもの。
他人を信頼していくと、嫉妬も少しずつ落ち着いてくる。
……と、二人の社会性が上がったことで、周囲も二人を受け入れやすくなり、言いたいことも言えるようになっていったよ、という一コマ。
「二人だけの世界」ではなくなっていくけれど、八百万界を引っ張る独神としてはレベルアップ。
(二人ともエグイぐらいに病んでいてくれ!勢もいると思うので、この路線は好みによりけりだと思う)
(二人とも更に病む路線だと八百万界も崩壊すると思う)
(奇跡的に八百万界救ったぜ!→その後すぐ崩壊もアリ)
(ここの話は本編ではないので、解釈違いだと思ったら見なかったことにして!!)
---12---
「おはようご……ざいます」
「おはよう」
独神が髪を結っていた。高い位置に髪をひっ詰めて。動く度にさらさらと揺れる。
「……連日暑いですからね」
ショウトクタイシはその変化を口にしながら、独神の様子を観察していた。
「そうなんだよー。一つにくくるなら華美じゃないし良いでしょ? あ、ミチザネ、おはよ」
「ああ。おは、…………どうした」
「髪型如きで二人ともそんなに驚かないで欲しいんだけど。とにかく始めましょ」
戸惑う二人に構わず、ぬるっと仕事を始める。
「(うなじを晒すな。と言ってやりたい。が、俺が意識していると思われるのは癪だ)」
「(暑いのも理解出来ますからねえ。これを制限するというのも……)」
もやもやしていると、廊下でツチグモが歩いているのが見えた。
同じ髪型をしていた。
「(やっぱりお前か)」
二人は同時にイラァっとした。
「見て! ツチグモにくくって? ってお願いしたの。糸も綺麗だけど髪も綺麗だと思わない?」
ノーテンキ独神。この無自覚さを殴ってやりたい。
「独神様は可愛いですね」
ショウトクタイシの物言いに、ミチザネ、ちょっとびっくりする。
独神も驚いて「……あ、うん」と答える。
「今、私に言われて困りましたよね?」
「だって。そういうこと、ショウトクタイシは言わないし、それに自分が可愛いとか考えてなかった。ツチグモにやってもらいたくて、それで私もするから、ってお願いしたから」
「そうですね。独神様はツチグモ様にやって欲しくて軽率にやっただけですもんね」
圧。
「……なんとなくだけど、私はしない方が都合が良い、ってことだよね?」
「察しが良くて助かります」
「……回避方法ってある?」
「今のところは思いつきません」
「そっか。そこまで言うなら従う他ないね」
短い命のポニーテール。
縛った跡すらない。
「前も、髪のこと注意された。そんなに駄目なことなの?」
「通常であればそうではないのですが。独神様は独神様なので……」
「誰彼構わずお前を好きになられて良いなら好きにしろ」
ミチザネははっきり言った。次の嫌われ役は自分だ、というように。
独神は力なく笑った。
「そっか。二人は私の魅了のこと、判ってるんだね。……言ってくれてありがと」
少し可哀想になる。本人の裁量でなんとかなる類ではないから。
「あ、気にしないで。ツチグモに見せられれば私はそれだけで良いんだから」
にこっと笑う。
気を遣っただけなのか、本音なのかは判らない。
---13---
「私は一生可愛く出来ないのかな」
ぼそっと独神が呟いた。ツチグモと二人の時に。
「……」
少し考えるツチグモ。
このひとはまだ独神の特性を知らないので、人目を惹くようなことをするなと注意されたという認識。
人目を惹くと、彼女の良さがまた広がってしまうので、それは嫌だと思う面倒な彼氏。
「そのままでも可愛い……じゃ駄目か?」
「嬉しいけど。……欲は際限ないのです」
ごろんとする。
独神も二人の言い分が間違っていないと判っているから、自分の気持ちにケリがつかない。
ばっ、と起き上がる。「うお」とツチグモがびっくりする。
「変装しよう! どう!?」
「駄目だ」
「……(テンション駄々下がり)」
「……やるなら”変化”だ。それならあるいは」
「よーし! じゃあ変化が出来るように頑張っちゃおう! シバエモンのところ行ってくる!!!!!」
走って行ってしまった。
ツチグモは後悔していた。
「(とても面倒なことが起きる予感がする。確実に……やるぞ、主なら)」
その後トラブルメーカー独神がものすごいことをやらかす。
(他の英傑の姿になるとか?)
(ツチグモが独神を捨てて別の奴に走ったとか言われる?)
(「ああもう面倒くせぇ!」ツチグモ心からの叫び)
(変化元の英傑も、こんな奴だっけ……?と思われる、ド迷惑)
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「いや、どうでもいいだろ」
と、ツチグモに言われたのは、通算百二十四回。
毎回傷つくわけではないけれど、時々私でも傷つく。
ねちねち数えるのも良くないと思っているけれど、好きな人のことだとなんでも数えてしまう。
ツチグモが本殿で食べたご飯で知っているものは初回から全部言える。
私以外と話していた回数も勿論数えている。
怪我したのに私に嘘の報告して騙した数もね。
忘れてしまえるひとたちが羨ましい。
せっかく、好きなひとのことなのに、悪い部分を見ちゃう自分は嫌だな。
良いことだけ覚えているような、都合の良いひとになりたい。
ツチグモのことは好きだけど、不満がないわけじゃない独神。
その後ツチグモが今流行っているお菓子をくれた。並ばないといけないもの。
「どしたの? 嬉しいけど、いきなりでびっくりしちゃった」
「……さっきは悪かった」
「ん?」
「……あの後、主大人しくなっちまったからな」
独神も抱き着いて謝って一緒に食べてはっぴーえんど。
(なんでも言えそうで何でもは言えない。普通の恋人)
(相手が好きだから。言うのが怖い。お互いに)
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「主」
「どうしたの?」
「触って良いか」
「どうぞ!! 脱ぐ?」
「昼だぞ」
「冗談だって。さすがにこんな、……弓向けられている状況でしないよ」
忙しいのにツチグモが来たら仕事を放り出しているので、ミチザネがキレて武器を取り出している。
ショウトクタイシは見る気もない。死んだ目で仕事を片付けている。
ツチグモは独神の手をとって、ぺたぺたと触っていく。
独神は嬉しくはあるが、ちょっと変だなと思った。
ツチグモは人前で触るのは好きじゃない。独神が喜ぶ顔を他の奴に見せるのが嫌だから。
なんでだろうなと思いながら好きにさせている。
「……。ああ、判った。邪魔したな」
「え。まだ居て良いんだよ」
「用事があるんだよ!」
ぶっきらぼうに返して行っちゃう。
残念に思いながら仕事に励む独神。
そんなことがあったことを常人なら忘れている頃に、答え合わせがくる。
「これ! 約束の指輪!!!」
独神震えて指輪に触れることもできない。
「……人族で、なんかそういうのあるんだろ。……と、聞いた」
「え。え。え。あ。いま。うん。噂の。しってる。しししってるよ??」
「っ、嫌なのかよ」
「何処をどう見たらそう思えるの!?」
いっぱいいっぱいになってる独神は座り込んで泣いてる。
予想とは違う反応でツチグモは困ってる。
どうしてあげればいいか判らず、独神が落ち着くのを待っている。
落ち着いてきても顔は上げない。だから、ツチグモは言うことにした。
「……兄貴に啖呵きってただろ。伴侶にするって。……あの後何も言わねぇから、俺も考えてたんだよ。主とどうなりたいかって」
鼻をすする音が聞こえる。
「主が俺のだって、目に見える印があると良いとは考えていた。それが人族のこの指輪とやらが丁度良かった」
まだ顔を上げてくれない。
「だから、結婚してやるっつってんだよ!」
赤くなりながら怒鳴るように言った。独神の方は小さく頷いている。
ツチグモはしゃがんで、独神の顔をあげさせようとする。ぐちゃぐちゃな顔をした彼女がいた。
お世辞にも可愛いとはいえないが、本当の顔だった。
いつもの作り笑顔や、澄ました顔とは違う。
「なぁ。…………なんか言ってくれよ。俺だってここまで緊張したんだぞ。なあ」
撫でてやりながら、ツチグモも不安げな顔をする。
独神は懐紙を出して、顔を拭き、涙を拭き、鼻水を拭いて、綺麗にした。
目の回りは依然として真っ赤だ。
「……ごめん」
ツチグモ、どきっとした。断られるなんて万に一つも考えていなかった。
「……どういうことだ?」
と聞くのが精々。
「驚いちゃって。嬉しいはずなのに、怖くなっちゃった」
またじわっと涙が出る。
「……本当に、私にその資格があるのかな。まともじゃない私が、まともな人みたいなことしていいのかな。……だって、私、幸せになっていい類の人種じゃないよ? ツチグモが知らないだけで、沢山戦を起こして、沢山殺して、私、本当にいていいのかな?」
「誰かがやらなきゃならないことを、主がやった。それだけだろうが。変に責任感じてんじゃねぇよ」
逃げられそうな予感がして、咄嗟に抱きしめた。
独神は静かに泣いてる。
でも指輪は受け取らなかった。
(珍しく独神が迷うパターン。このひとを自分の業に巻き込んでいいのかと本気で考えたからこそ迷った。自分が良ければ、ではなくて、今回はツチグモのことを考えている。即決出来ずに、かなり長く考えることになる)
(好きになって、兄を失う時のような喪失感も味わいたくない。自分のせいで殺されたらどうしようとも思っている)
(とにかく迷いまくる場面)
(本当に一生をかけてツチグモを幸せにする覚悟を固める。これまでの「ツチグモのため」とは質の違う、真の責任感。その覚悟が出来て、ようやく受け取る)
(ツチグモは、この頑固な独神をどうにかすべく、色々考えるだろう。小手先の話じゃなくて。迷う自分を独神に肯定してもらっていたが、今度は逆になる)
(最終的にはハッピーエンドになるよ)
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「主殿。受け取れ」
ミチザネが手紙を独神に押し付けた。
次は隣にいたツチグモに向かって命令する。
「そして貴様。明日の討伐は取りやめだ」
「あ? なんだよ」
「明日は主殿の護衛につけ。いいな」
「判った。随分急だが問題でも起きたのか」
「起きているから予定を変えているのが判らないか」
嫌味な言い方にムカついているツチグモ。まだ手は出していない。
「え。でもなに? ここって四ヵ月前に悪霊が出たけど今は道も潰し、」
「つべこべ言うな。時間の無駄だ」
二人とも判らないまま。明日になり、行く。
「護衛がツチグモ一人でしょ? さすがにどうかと思うよ。私の立場上」
「知らねぇよ。あの嫌味野郎馬鹿に説明しても無駄って態度が気にくわねぇ。主もよくいられるな」
「付き合い長いからね。もうなんとも思わないよ」
昨日渡された手紙は、着いたら見るように言われた。
「……。でも私に隠しごとってのが嫌なのよねぇ…………」
道中だが独神は言いつけを破って、手紙を開封した。
「どうせ途中で見たのだろう。主殿の行動はお見通しだ」
「なんだ。見る前提だったの」
読むと、旅館とったから休めって。数日前から英傑を派遣して悪霊の確認はしている。今の護衛はツチグモ一人だから、好きに過ごせと書いてあった。
「……いつも、世の為に働きすぎだ。時には自分の時間を過ごせ。主殿の働きには皆十分感謝している…………だって」
「紙だと素直なんだな」
「彼、詩人だから」
突然ふたりきりの休暇になってそわそわしてしまう。
せっかくだから密かに誂えていた着物着たかったなーとか、慰労なら普段身を粉にして働く独神に何か買ってやっても良かったな―とか。各々思っている。
でも胸は弾んでいて、今日は周囲のことは気にしないでいられるのだと、二人は楽しみにしている。
「おい。休むために来て仕事してんじゃねぇ」
「身体が勝手に……」
「糸! 目立つって! 駄目だよ!」
「そうだったな……」
休暇だからといっても気持ちがついてこなくて、どうしても日常のくせが出てしまう。
そんな休暇に合わない行動をお互いに指摘する、そんなやり取りも楽しんでいた。
借りた旅館着。ツチグモが帯を結んでくれる。
「ありがと。じゃあ私もしてあげる」
独神がちまちま動いているのが可愛い。と、心の中で思っているツチグモ。
「……今日、ずっと誘ってるだろ」
どきっとする独神。確かにして欲しかった。
「耐える方の身になれよ」
頬を包むように触れる。いつもなら少し乱暴な口付けをされるのに、今日はしてこない。
したくないわけじゃないのは顔で判る。今日のツチグモはすごく色っぽいから。
「慰労ってことだからな。主を疲れさせられねぇよ」
「ずるい! 私だけがそういうこと考えてるみたいじゃん!」
按摩してくれる。
ツチグモに触られるのも、触るのも好き。
他人ってあったかい。
気持ち良いことなんだ。
他人に自分を投げ出すの、怖かったのに。
安心できるひとにされると、ただ気持ち良いだけなんだ。
身体がぽかぽかしてくる。
そのうちに色々なところに口付けてくる。
少しずつ衣服が乱れてくるのも自然なことだった。大事なところだけかろうじて隠れていて、衣の機能を果たしていない。
二人して息が上がる。
「……着く前から判ってた。今日の全てがいい思い出になるって。今後なんども今日を繰り返し再生する。だから、一切遠慮しないで」
その言葉通り、その日の夜はどっぷりと。
けど抱くだけじゃなく、衣類はないまま蒲団の中で会話をする。
「悪霊がいなければ、こういうの、毎日できる?」
頭をツチグモのほうに置きながら。
「できるだろ」
「じゃあ、がんばらないとね」
少し違う話もする。
「ツチグモがいるなら、八百万界じゃなくて良いよ。お兄ちゃんも蘇って、もうなんか気が抜けちゃった」
「……本当に、救って欲しい? この世界」
答えを間違えるととんでもないことになるのは明らかだった。
ツチグモは落ち着いて、一度考えてから答える。
「……判んねぇ。ただ、知らねぇとこで変なことに巻き込まれるくらいなら、八百万界でいいんじゃねえの。勝手を知っていると過ごしやすいだろ。今更他所の規則を手探りで知って守れってか? 俺は多分無理だぞ」
「……そうかも。ここなら何でもできるもんね。救ったら特に。だって独神だし」
独神もじっと考える。
「じゃあこの世界をどうにかした方が良いんだね」
この発言にほっとするツチグモ。
正直ツチグモだって他所の界のことは判らなくて、良いか悪いかの判断が出来ない。
だからとりあえず先延ばしになるようにした。
ツチグモはツチグモで考える。
もし、他の界へ行くだけで独神が自由になるなら、それでいいじゃないか。
「(特別なひとではない、俺だけの主になるなら、悪い話じゃない)」
なにかあれば、八百万界を捨てて独神の手だけ引いて逃げる気はある。
ただ、逃げるべきか、いるべきか、決行するならいつか、失敗も後悔もしないようにじっくりと考えている。
ツチグモは独神ほどの即決力はない。熟考し、どちらの道も選べるようにしておこうとしている。
そんないつもより踏み込んだ話もしたけれど、基本的にはずっと楽しく過ごした二人。
本殿に帰ってからは、独神はとっても元気。
今回送り出してくれたミチザネに対して、屈託ない最大級の笑顔を返す。
ミチザネは「お断り」と言わんばかりに手のひらを独神に突きつける。
「独神様、ツチグモ様が嫉妬なさいますよ」
と、ショウトクタイシに言われて、しまったと独神。普通の顔になる。
特別な笑顔はひとりのためだけに。
----おわり-----
25/07/09 加筆修正
どさくさに紛れて小話一つ追加しました。
ヨリミツの話。
──
お付き合いありがとうございました。
ここまで、私の自己満足についてきていただいて本当に感謝しております。
元々ゲームでツチグモが好きで、せっせと花やら特殊贈り物やらしていましたが、そうやってしていた時よりも、もっとツチグモのことが好きになったような気がします。
書かないと判らないこといっぱい、あるある。
と言っても今回は、この長編用のキャラ解釈だったので、皆様の心の中にいるツチグモとは異なる思考・動作を行うかと思います。
これは並行世界βの出来事なんだと思って下さい。独神の数だけ本殿があり、英傑がいるので。
では。
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