あいたいあえない

 誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか

 八百万界が平和になって、英傑のみんなは散り散りになった。私も太陽神として崇められ、疲れた頃にはスーくんが抜け出す手引きをしてくれて、この美しい八百万界を太陽の下で楽しんでいる。
 八百万界が美しいのは、主さまのおかげだ。
 でもそのことも少しずつ忘れていく。
「アマテラスさまのおかげです」
 ずっと違いますと言ってきたのに、最近はもう否定することも面倒でうんうんとおざなりに頷いている。

 私、主さまのこと、あんなに好きだったのに。
 あの頃は寝ても覚めても主さま主さまで、寝ている時にすら忘れることはなかった。
 平和になってからは思い出すことの方が少なくなっている。

 界帝を倒し、外界からの脅威が消え失せ、血だらけの私たちは両手を上げて歓声を上げた。私たちを導いてくださった主さまも、きっと同じだと思っていた。
 主さまの身体は光の粒に覆われていた。

「なにこれ。ねぇ、ま──」

 そうして姿を消した主さまを、八百万界で二度と見ることはなかった。
 主さまが使っていた物や服は全て消えた。もう思い出す術はない。でも思い出はある。
 なのに、こんなにあっけなく、忘れちゃうんだっけ。
 主さまの薄れた笑顔を思い出すと涙が出る。

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