糸の行方

(……またか。この数日で三度目だな)

 ツチグモは木の上から獲物を睨んだ。
 目の前を通るのは小柄な女とその護衛と思しき者が二人。
 女は神官服に身を包み、ぼんやりと周囲の自然を眺めてながら歩いていた。
 護衛は対照的な二人だった。
 一人は長身で神経質そうな目つきをした男で、常に右手を刀の柄に添えていた。絶えず周囲を警戒している。
 もう一人は傷だらけの粗雑な男で、わざと自分の位置を教えるかのように大きな足音で歩いていた。どうやら女主人の足元を整えるという名目で小石を踏み砕き、突き出た木の根を力任せに引き抜いては、かえって道を荒らしている。

(いいカモだ)

 ツチグモは身体から糸を放出し、木々の間を滑るように移動する。ほとんど音を立てずに女の真上へと位置を取った。
 その瞬間、不意に女が上を見上げた。互いの目が合う。色素の薄い瞳に宿る光が、ツチグモの心に一瞬の戸惑いを生んだ。

(何故気付いた)

 躊躇している暇はない。ツチグモは一気に飛び降りた。
 ツチグモを目で捉えながらも動けないでいる女の首に手を触れる──前に強烈な一撃を受け、ツチグモは地面に叩きつけられた。痛みが全身を走り、視界が一瞬霞む。

「主君に手を出すとは身の程知らずにもほどがある」

 男は冷ややかにツチグモを見下ろしていた。その目には、自分が格上であるという絶対的な確信が宿っている。
 ツチグモは歯を食いしばった。
 権力者特有の傲慢さ、他者を踏みにじる尊大さ。
 こういう目つきこそが、ツチグモが最も憎むものだった。

あるじさん、大丈夫か」

 もう一人の護衛が女を気にかけると、女は静かに首を振った。

「へいき、へいき。ちょっとびっくりしただけ」

 女の声には怯えの色がない。世間知らずなのだろう、本当に驚いただけのようだ。
 ツチグモは機を窺うように身を起こそうとする。その時、首筋に冷たい刀の感触が走った。

「誰が面を上げて良いと言ったんだ」

 護衛の男は刀を僅かに押し付け、ツチグモの皮膚を切り裂いた。血の一滴が地面に吸い込まれた。

「だめだめ!」

 女はその手で刀を追いやった。
 ツチグモの前でしゃがみ込み、穏やかな声で問いかけた。

「私に何か用ですか?」

 ツチグモは答えず、ただ女を睨みつけた。

「答えろ」

 護衛が刀の柄でツチグモの頭を叩く。鈍い音が森に響く。

「やめて! ……それで、あなたはたまたま襲ったということですか?」

 女は護衛を制しながら、依然として優しい調子でツチグモに問いかけた。

「だったらなんだ」

 ツチグモの目は捕食者のように鋭い眼光を放っていた。

「見逃してもらえませんか?」

 女の言葉に、護衛たちまでもが驚きの表情を浮かべた。

「ノコノコ来やがった獲物を易々と逃がすとでも?」
「その前にこちらが君を殺すだろうね」

 女は静かに手を挙げて護衛を、特に刀の男の方を制した。刀の男は不満そうな表情を浮かべながらも、一歩後ろに下がった。
 女はツチグモに再度尋ねた。

「私たちに気づかなかった……ということではいけませんか?」

 女の提案にツチグモは眉をひそめた。

「それになんの意味がある」
「無益な殺生が一つ減ります」

 女の真意は判らないが、何故だかその瞳は悲しげに見えた。
 ツチグモはその視線を避けるように顔を背けた。

「下らねぇ」

 ツチグモは護衛の足元をすり抜け、森の奥へと逃げ出した。木の陰に隠れながら三人の動向を観察する。
 女は深く息を吐くと、その場で頭を下げた。

「急いでいるので今日はこのまま失礼します。後日お詫びに行きますね」

 彼女は護衛たちと共に歩き始めた。遠ざかる三人の背中をツチグモはじっと見据えていた。

「何故手を出してはいけないんだ」
「主君は争いが嫌いだからね」
「悪霊以外とやれると楽しみにしてたんだがな」
「また機会があるさ」

 護衛たちの会話が風に乗って届く。
 相手にされていない、そんな憤りがツチグモの胸を焼いた。

「忘れねぇからな」

 ツチグモの声は森に吸い込まれ、誰にも届かなかった。



 数日後、ツチグモは再び縄張りに侵入者の気配を感じた。木の間から覗き見ると、見たことのある女が一人で立っている。周囲を見回し、何かを探すような素振りだった。

「あ、ツチグモさん。こんにちは」

 女は隠れているツチグモに向かって手を振った。
 どうして自分の存在に気づくのか、ツチグモは警戒しながらも女の前に姿を見せた。

「失せろ」

 威嚇するように低い声で言ったが、女は穏やかな表情を崩さなかった。

「お詫びに窺いますって言ったじゃないですか。……とは言え、それだけでもないのです」

 女は小さく頭を下げると表情を引き締めた。

「旅人を襲う妖をなんとかして欲しい、と私に依頼が来たんです」

 ツチグモは周囲を素早く見回した。護衛はいない。今なら彼女を殺せるかもしれない。
 だが前回の一件から女自身も油断はできないと判断し、一先ず話を続ける。

「勝手に人の縄張りを踏み荒らしているのはそっちだろうが」

 すると女は少し考え込むように目を伏せた。

「そうか……なら黙って通られるのはいい気分がしませんんね。先日は私達も許可なく通ってしまい申し訳ございませんでした」

 深く頭を下げる女の謝罪に戸惑いが胸の内を掠めたが、長年の警戒心がすぐにその隙間を埋めていく。

「判ったなら帰れ」
「はい。また来ますね」

 花が開くような笑顔から放たれた言葉には耳を疑った。

「来るな」
「お話がしたいので。それに次は山へ入らず、入口でお待ちします!」
「誰が行くか」
「ならば私が山中へ行く方がよろしいですか?」
「そもそも何故俺が貴様の相手をしなければならない」

 表面上は穏やかに見える女だが、言葉の裏には強引さがあり、自分の思い通りに物事を進めようとしている。ツチグモの内側で、警戒心と殺意が交錯した。今すぐ始末するか。

「私がいなくなっても次の者が来るでしょう。先方から提示された金額は村で一年暮らせる額でしたから。彼ら、本気ですよ」

 ツチグモが縄張りとする山の周囲には、村が点在している。村人たちが行き来するにはツチグモの縄張りを横切らねばならない。ツチグモは今まで、価値のある獲物以外に手を出さず、村人たちの存在は黙認してきた。その消極的な選択が、皮肉にも今の状況を招いたのだ。ツチグモは舌を打った。

「ならそいつらもまとめて殺せばいいだけだ」
「それは看過できません」

 女はぴしゃりと言い切った。ツチグモは鼻で笑う。

「そんな弱そうな身体で何ができる」
「私自身は。でしょう?」

 柔らかい風が女の髪を撫で、まるで見えない力が彼女を守るかのように周囲の空気が震えた。その笑顔には、弱さとは無縁の確信が浮かんでいた。

「……護衛の奴らか」
「他にも力を貸してくれる方々が私の呼びかけに応じてくれます」
「結局は数で押そうってか」
「その言い方は少し違います。私が彼らを呼ぶのは、守るべきものがある時だけ。それに彼らは一騎当千ですから。数はいらないのです」

 ツチグモは彼女の目を見つめた。
 こういう威を借る弱者の押し付けには虫唾が走る。力なき者が力ある者を操り、あたかも自らの力であるかのように振る舞うその姿が、ツチグモの記憶の奥底にある忌まわしい過去を呼び覚ました。

「結局は貴様の正義を押し付けているだけか。下らねえ」
「否定できませんね。この道を通りたい村人も、あなたも、双方が納得できる解決策を見つけたいと私だけが勝手に思っています」

 女は真剣な眼差しでツチグモを見上げた。主張は粗方理解した。相手をする必要はない。

「俺は納得なんかしない。俺のやり方を信じる」

 ツチグモは木へと飛び移った。

「あなたなりの理由があるなら、それを教えてもらえませんか?」

 ツチグモは腕から糸を放ち、瞬時に女の首を絞めた。糸が彼女の白い肌に食い込み、赤い筋が浮かぶ。

「この期に及んで話し合いの余地があると思えるとは滑稽だな」

 女は苦しそうに息を吸い込むが、なお諦めない様子だった。

「……余地はあります」

 彼女は苦しげな声で絞り出した。

「だって私のこと、すぐに殺さないから」

 その言葉に、ツチグモは一瞬動きを止めた。

「……うるせぇ」

 糸を緩めたのはツチグモ自身にも理解できない行動だった。
 ツチグモの糸に捕らわれた者たちは皆、命乞いをするか、呪詛を吐くか、ただ恐怖に凍りついていた。
 だが目の前の女は違う。殺意に直面しながらも、恐怖の欠片すら見せず、尚も語りかけてくる。
 糸から解放された女は首筋を撫でながら数回咳き込んだものの、その目には依然として光が宿っていた。まるで些細な行き違いでもあったかのように。女は息を整えると、先程と変わらぬ柔らかな口調で話し始めた。

「噂であなたが旅人を食べていると聞いたんですが、ほんとですか?」
「噂なんざ知るか」

 ツチグモは顔を背けた。不可解な女との会話に意味など見出せないと理解しながらも、口は勝手に言葉を紡ぎ出していた。

「……奪うだけだ」

 低い声で絞り出した言葉に、女は身を乗り出すように聞き入った。

「持ち物を?」
「生きていくのに必要なものは手に入れる。邪魔する奴は殺すがな」

 素っ気ない返答に、女は意外そうな表情を浮かべた。

「みなさん誤解してるんですね」

 女は首を傾げ、納得したように頷いた。
 その反応にツチグモは眉をひそめた。殺人と略奪を重ねていると聞いて、女はまるで子供の悪戯かのような反応をしている。

「残念ながら、そのせいで近いうちに討伐隊が組まれます」
「それがどうした」

 女は急に黙ると、目を逸らして息を吐いた。

「…………はあ、妖って難しいな」
「なんだと?」
「いえ」

 女は手を振り、急いで話題を変えた。

「あの、提案があるんですが」
「またか」

 ツチグモは嫌そうに顔をしかめた。

「村人のためにこの山を通らない新たな道を作ります。そして討伐隊の件も片付けましょう」
「貴様がか?」

 ツチグモは鼻で笑った。

「交渉なら私、使えるんですよ」

 女は自信たっぷりに胸を張った。
 大小の村々全てを相手に交渉し、さらに金の匂いに釣られた討伐隊までどうにかしようというのか。ほら吹きと一蹴してもよいはずなのに、彼女から漂う確信は嘘とは思えない。長年獲物を見抜いてきた勘がそう言っている。

「……貴様何者だ」

 気付けば、女への興味が止まらなくなっていた。
 これまで自分以外を獲物としか見てこなかったツチグモにとって、恐れず立ち向かってくる存在は新鮮だった。久しく忘れていた感情が揺れ動くのを感じる。

「言っても嫌いませんか?」
「言えないなら帰れ」

 ツチグモは腕を組み、目を細めて女を見据えた。だが内心では、彼女の正体への好奇心が燻っていた。

「実は私、独神なんです」

 女の言葉に、ツチグモの目が大きく見開かれた。

「は? 顔が腐り落ちて角と牙だらけの醜悪な化け物だって話だろうが」

 ツチグモは拍子抜けしたように女を見つめた。だがそれ以上に取り乱しているのが女だった。

「なにその噂! いくらなんでも言い過ぎでしょ!!」

 女は真っ赤になりながら喚いた。その姿は恐ろしい怪物の想像とかけ離れている。

「とにかく論より証拠。討伐隊も村人たちも止めます。私が本物かどうか。それで判断して下さいね?」

 女は微笑み、手を差し出した。ツチグモはその差し出された手を一瞥したが、触れようとはしなかった。
 突然現れた女の突飛な主張をどう受け止めればいいのか、答えを見出せずにいた。独神などという存在が本当にこの世にいるのか、そして目の前の奇妙な女が仮にそうだとして、自分はどう対応すべきなのか。長い沈黙の後、ツチグモは女を置いて森の奥深くへと消えた。

 それから一週間が過ぎた。女の宣言通り、縄張りを通る旅人は一人もいなくなってしまい、すっかり収入が途絶えてしまった。
 様子を窺いに山を下りたツチグモは村の外れで独神を見つけた。彼女は村人たちと話をしており、皆が彼女の言葉に耳を傾けている様子だった。
 独神がちらりとツチグモの方へ視線を向けた。ツチグモは隠れていたにも関わらず目が合った。独神は村人たちに何かを言って話を切り上げると、村の外れへと歩いていく。人気がないところでツチグモに声をかけた。

「ツチグモさん。約束守りましたよ」

 独神は嬉しそうに手を振っている。

「貴様のせいで稼ぎが減った。どうしてくれる」
「でも侵入者が嫌だったのでしょう? 喜びこそすれ、怒ることはないのでは」

 女の言葉にツチグモは睨んだ。縄張りを操られたことへの屈辱と不快感が渦巻いていた。そのすべての憤りを女にぶつけようと跳びかかる。しかし女に辿り着く前に身体が何者かに押さえつけられた。地面に組み伏せられた格好は、まるで女にひれ伏しているようだった。

「雑魚のくせに」

 ツチグモは吐き捨てた。
 直後、ツチグモの上から笑い声が響く。

あるじさんがか? 判るぞ。俺も最初はそう思っていた」

 男の一人が大笑いしている。そして先日ツチグモに刃を当てた男は今にも殺しそうな目でツチグモを見ている。逃げることはできない。
 独神はツチグモを見下ろした。

「ツチグモさん。実は村の方たちの『なんとかする』とは『殺す』ことを期待していたんです。でも私は別の方法を選びました」

 なんとかするに殺す以外の意味があるわけがない。とぼけたことをいう女だと鼻で笑った。

「今すぐやりゃいいじゃねえか。相手になってやる」

 出会う者全て殺していれば良かった。そうしていればなにも邪魔されずに済んだ。こんな女に振り回されることも。

「これだけ教えて。あなたは誰かを襲うことに喜びを得ていますか?」

 女の問いかけに、ツチグモは口角を上げた。

「そんなの当たり前だろ」

 独神は護衛たちに目配せした。拘束が緩む。
 すぐさま姿を隠したツチグモに向かって、独神は静かに語りかけた。

「じゃあ一緒に戦ってくれませんか。できる限りのお礼はします」

 森の中は静まり返っていた。風が女の声を乗せて木々の間を通り抜けていく。
 陰から冷たい声が返ってきた。

「……俺が小金欲しさに襲っていると思っているのか」

 蜘蛛の糸が陽光に煌めき、周囲に張り巡らされた見えない網が一瞬だけその姿を現した。金のために尻尾を振る獣と同列に見られたことへの怒りが、身体から滲み出ている。枝の間から覗く蜘蛛の眼が鋭く光った。独神は息を呑む。

「俺は復讐のためにここにいる」

 二文字の言葉が静かな森の空気を引き裂いた。

「……森で、復讐、ですか」

 ツチグモの声が木々の間から漂い、その言葉と共に森全体が微かに震えた。突然、独神の足元から数歩先までの空間に、日光が反射して無数の糸が浮かび上がる。

「森は俺の身体の一部だ。ここに入ったものは、すべて俺の意のままになる」

 瞬く間に独神の身体を糸が幾重にも巻きつけていく。細い糸は視認できないが、その拘束力は身動きが取れないほどである。

「奴は戦いを求めて各地を回っている。次にここを通った時こそ息の根を止める」

 かつて、ツチグモは一人の刀使いに敗れた。「準備運動にもならない」と聞きながら死んだツチグモは誓った。必ずこの手で殺すと。
 幸か不幸か、英傑の素養を持っていたツチグモはこの地に蘇り、それからずっと復讐の機会を待ち続けている。
 本来ならこんな珍妙な女ではなく、その男を拘束し縊り殺してやりたい。
 長い沈黙の後、ツチグモは指を軽く動かした。瞬時に独神を拘束していた糸が緩み、女の身体から落ちていく。
 独神は軽く服をはたきながら、息を整えた。

「でもですよ、その方が森を通る確率は低いのでは?」
「可能性は零ではない」

 ツチグモの答えは簡潔だった。

「俺は百年でも待つ。復讐の一瞬のために」

 時間など問題ではない。ただ一つの目的のために生きている男の、揺るがない決意だった。
 独神は息を呑んだ。

「か、かっこいい!!!!!」

 突然の叫びに、ツチグモはぎょっとした表情を浮かべた。独神は両手を頬に当て、目をキラキラさせていた。

「凄い! その執念尊敬します! 是非一緒に来て下さい。やっぱり私の目に狂いはないって!」

 独神の熱い視線に、ツチグモは後ずさりした。

「おい……なんなんだ貴様は……」

 予想外の反応に戸惑いを隠せなかった。先程までの自分の言葉が全て恥ずかしいものに思えてくる。

「感服しました! 私にはないその折れない心、とても欲しいです。一緒に来ませんか? それに情報が欲しいなら私といた方が絶対良いですよ。ね、情報を得てからここへ戻るのはどうです?」

 独神は抑えきれない興奮から言葉を畳みかけてきた。その目は輝き、声の調子まで上がっている。拘束した時は少し緊張した顔を見せていたのに。

「そう言って、都合よくここから俺を引き剥がしたいだけだろ」

 ツチグモは警戒心を取り戻そうとしたが、独神の熱意に圧倒され、自分の言葉がひどく弱そうに聞こえた。やはり調子が狂う。

「今はあなたが欲しい」

 独神の真剣な眼差しに、ツチグモは言葉を失った。

「話が通じねぇのかよ……」

 ツチグモは小さく呟いた。すると独神の従者たちが理解を示した。

「はっはっはっ! あるじさんはそういうひとだ。恐ろしいだろう。俺も未だに判らん! それにお前も、弱い旅人ばかり相手にするより、悪霊を片っ端から倒している方が腕も上がるだろう。待つだけではせっかくの腕も錆びるぞ」

 従者の言葉に、ツチグモは考え込んだ様子を見せた。
 一理あると思った。復讐相手の男は刀使い。だが今回のやりとりで二度もツチグモは抑えられている。自分が弱いとは思っていないが、接近戦は現状不得手だ。

「どうですか?」

 独神は期待のこもった顔で覗き込んでくる。しかし、ツチグモは森の中へ溶け込んだ。

「……また会いましょうね」

 独神の言葉が深緑の中へ消えていくのを感じた。



 数日後、本殿に一人の影が忍び込んだ。月明かりの中、ツチグモの姿が浮かび上がる。周囲を警戒しながら、建物の奥へ向かい静かに独神の名を呼んだ。
 戸が開いて独神が現れると、ツチグモは深く息を吐いた。

「俺のためにここに来た。貴様のためではない」

 自分が素直ではない子供のようなことを言っているような気がしたが、独神はそれを気にする様子もなかった。

「ありがとうございます!!」

 独神のにこやかな笑顔がはじける。ツチグモは今まで感じたことのないものに包まれながら、新たな一歩を踏み出す決意をした。
 ツチグモは独神と軽く言葉を交わした後、彼女に勧められるままに客間を使うこととなった。
 来客用の蒲団を用意されたが寝られるわけがなかった。あちこちから漂う異様な気配。この中で隙を見せられるほど鈍感ではない。部屋の中を糸だらけにし、外敵を捕らえるように罠を張った。
 その中央でじっと身を潜めた。
 朝日が昇り、陽光がじわじわと部屋を照らす頃、廊下が軋む音が聞こえた。
 来訪者は戸の前で立ち止まると、遠慮がちに声をかけてきた。

「ツチグモさん、起きていますか? 本殿をご案内します」

 ツチグモは糸の間をすり抜け、戸を開けた。
 独神は穏やかな笑顔で立っていた。

「案内しろ」
「はい。あ、でも先に朝食にしましょうか」
「必要ない」

 ここがどういうところか判らない以上食事をとることはできない。食料は自分で調達する。
 夜間に見た時とは違い、日中の本殿は驚くほどの活気に満ちていた。人や妖、神が入り乱れて、顔を洗い、歯を磨き、刀を振り、雷を落としている。
 一瞥しただけで、八百万界でも屈指の実力者ばかりだと判る。

「ここにいるのは全員英傑です。他の人はここに入れないようにしています。その方が良いと思うので」

 独神は柔らかな声で説明した。

「貴様を主とするような奴等だ。どうせ貴様みたいなお人好しばかりなんだろ」

 ツチグモは敢えて馬鹿にするように言って反応を伺った。独神は困ったように首を傾げている。

「……そんなことはないですね」

 独神は言葉を選ぶように、視線を少し逸らした。

「各々理由は違えど悪霊を倒したい方ばかりですので。ほら、あちらを見て下さい」

 指差す方向を見て目を疑った。妖力の強さに一瞬息を呑む。九つの尻尾を持つ妖といえばひとりしかいない。

「彼女はタマモゴゼンと言います。一血卍傑で産まれた子で可愛いんですが、倒した悪霊数は本殿でも上位ですよ」

 タマモゴゼンはくすりとツチグモを笑う。その目には挑発と興味が混ざる。
 独神が手を振ると、にこやかに手を振り返した。尻尾の方が千切れんばかりに左右に揺れているのが気になる。ツチグモへの態度とは大違いだ。

「……九尾と親しいのか」
「休みが合えば一緒に買い物に行く仲です。彼女が見繕う物は素敵な物ばかりですので、ツチグモさんも仲良くなったら一緒に行ってみてはどうですか?」

 ツチグモは一瞬、自分の耳を疑った。九尾の狐といえば、八百万界でも悪名高き存在だ。古来より幾多の国を滅ぼし、権力者に取り入っては魂を喰らい、数えきれぬ命を散らせてきた女狐。その血塗られた爪で人の首をねじ切り、まだ温かい心臓を食らうと伝えられる妖怪と出かけるなどおぞましい。
 それなのに独神は、まるで旧友のようにタマモゴゼンと手を振り合っている。気が触れているとしか思えない光景だった。
 ツチグモの目には、ますます独神が得体の知れない存在に映った。
 不意に、別方向から冷たい視線を感じた。振り向くと、左右の瞳の色が異なる男が氷のような眼差しでこちらを見据えている。独神がツチグモの動きに気づいて振り向いた瞬間、その男の表情は瞬時に変わり、蠱惑的な微笑みを浮かべた。

「おはよ。……あの人はウシワカマル。神代八傑の一人で、ちょっと不思議な人。笛が上手でよく聞かせてくれるんですよ」

 神代八傑の名は知っている。無謀にも悪霊に挑んだ八人の英傑たちで、八百万界でも指折りの実力者たち。
 力を失ったと聞いていたがとんでもない。十分な力を持っているのが佇まいだけで判る。

「なぜだ……」

 ツチグモは思わず呟いた。
 八百万界で生を受けたからといって、彼らのような存在と会うことは一生に一度あるかないかだ。
 それがこうも簡単に近づくことができ、しかも共同生活をするという。
 英傑以外を入れない措置は正しいだろう。各々の信奉者が殺到することが容易に目に浮かぶ。悪霊相手より苛烈な戦いになるに違いない。
 今度は廊下の角から現れた胸に傷のある男と目が合った。その目に灯る敵意を感じ、ツチグモは咄嗟に身構えた。指先に糸を巻きつけ、いつでも攻撃できるよう準備する。相手も刀の柄に手をかけていた。

「だめですよ。マサカドさん」

 独神は素早くその間に割って入った。

「本殿で戦いはなしって言ってるじゃないですか。元気が有り余っているなら討伐に行って下さいよ」
「将軍。旅人を襲っていた蜘蛛の妖は討伐依頼が出ていたはずだが」

 男の声は低く、ひんやりとした空気を運んできた。ツチグモの身体が疼いた。

「仲間に引き入れちゃいました。今日からここで一緒に暮らすから仲良くしてくださいね」

 マサカドと呼ばれた男ははしゃぐ独神を一瞬見据えたあと、鼻で笑って立ち去った。

「ハッ、怖気づいたのかよ」

 ツチグモは嘲るように笑った。

「全然。私が許可したらすぐに首を落としてた」

 独神の表情には笑いも恥じらいもなく、ただ事実を述べるようだった。ツチグモの嘲笑は空振りし、かえって自分が軽率だったことを悟らされる。馬鹿にされたような、一段低く見られたような屈辱感が込み上げる。

「貴様は俺があれにすぐやられるって思っているのか」
「この距離は良くない」

 独神は真剣な眼差しで言い切った。その確信に満ちた様子に、ツチグモは思わずふっと笑みが零れた。
 なるほど、確かに近距離戦では不利だ。

「ならいい」

 独神が戦術について全く無知というわけではないらしい。少しだけ悪くないと感じた。
 その後も本殿を案内され、所属する英傑達を見た。彼らは種族の垣根を越えて交流し、思い思いに語らっていた。人と妖、神が入り混じるその光景は、長年一人で生きてきたツチグモにとってはあまりに異質だった。今後自分もあの輪の中に入ることになるのかと思うと、背筋に嫌な感覚が走る。

「……あの中に入るのは死んでもごめんだぞ」
「必ずしも仲良くしろとは言いません。約束は一つ。本殿内での私闘は禁止です」
「それだけか?」
「それだけです。本殿で寝泊まりするしないも自由。都が良い人、静かなのが良い人と様々ですので」

 夕暮れが迫る頃、独神はツチグモを本殿の東側にある一角へと案内した。普通の部屋かと思いきや、そこは広大な書庫だった。床から天井まで書物が並び、中央には様々な地図が広げられた大きな机がある。壁際には無数の巻物や書類が整然と分類されていた。

「じゃーん。ここが私の仕事部屋です。集まってくる情報は全てここに持ち込まれます」

 独神は誇らしげに胸を張った。
 ツチグモは無言で部屋の中を見回す。あまりの情報量に目を見張る。
 そこには八百万界の地図だけでなく、神族の隠遁先や主な妖の生息地図、人族の立場ある者達の愛人一覧、さらには異界の地図まであった。

「全て貴様らが集めたのか?」
「そうですよ。これだけの量ですからね、どこで何が起きているか、誰が何をしているかが大体判るんです」

 ツチグモは一枚の地図に目を留めた。それは自分の縄張りだった山の詳細な図だった。そこにはツチグモの寝床も逃走に使う道も正確に記されていた。

「……俺のことも調べていたのか」

 独神は静かに頷いた。

「依頼だったので」

 独神は部屋の中央へと進み、巨大な水晶球のついた装置に手をかざした。すると床一面に淡い光が広がり、まるで生きているかのように山々や川、森の姿が浮かび上がった。それは鳥が空から見下ろすような精密な景色で、ところどころに小さな光の点が煌めいていた。

「ツチグモさんが欲しい情報もきっとありますよ。その復讐したい相手のお名前は?」
「俺が尋ねたことにだけ答えろ」

 独神がどこまで把握しているのか見当もつかない。
 ツチグモは試しにいくつかの事柄について独神に尋ねた。東国の戦の詳細。山の向こうにある村の歴史。ある妖怪の生態。次々と難しい質問を投げかける。
 独神はそのすべてに思案することなく正確に答えた。まるで目の前の書物を読み上げるかのように流暢だった。

「まさか、全部頭に入れているのか」

 ツチグモは半ば呆れたように言った。

「一度見たら覚えられるから」

 ツチグモは驚きを隠せなかった。思わず感心の笑みが浮かんだ。

「多少の特技はあるようだな」
「こんなの他の英傑も出来ることですよ」

 独神はさらりとそう告げた。謙遜しているようには見えない。

「そうやって集めた情報や持ち込まれた依頼から、英傑の皆さんに悪霊退治をお願いしています」

 その言葉を聞いて、ツチグモは疑問を持った。
 あの猛者たちが記憶力が良いだけの者に従っているのは何故か。

「妖どもが貴様の命令を聞き入れているのか?」

 妖と限定したのは、自身が属しており、他人の言うことを聞かない特性をよく知っていたからだ。

「はい。みんな頼んだらやってくれますよ」

 独神は当然のことのように答えた。

「……タマモゴゼンもか」
「むしろ彼女は積極的なくらいです」

 ツチグモは目を細めた。嘘くさく感じるが、強大な実力者たちが集まっているのは事実だ。些末な見返りで動くとも思えない。
 独神の正体とは何なのか。この不思議な力の源は。表面上は弱々しく見えるこの女が、もしもツチグモの知らない強大な力を持っているとしたら。
 ツチグモは独神の姿を改めて見つめ、心の奥で警戒を強めた。彼女の柔らかな微笑みの裏に潜むものを探るように。



 本殿での二度目の夜、ツチグモは与えられた部屋で一睡もできなかった。畳の感触が馴染めないのと、周囲の異質な気配に神経を張り巡らせていたからだ。幾度となく外を眺め、逃げ道を確かめてしまう。
 膨大な情報量に頭を疲れさせ、やがて浅い眠りに落ちたツチグモの目を覚ましたのは、東から差し込む朝日だった。戸の隙間から外を窺うと、庭で木刀を振るう独神の姿が目に入った。一振り一振りが精確で、無駄な動きがない。英傑たちから指導を受けているのか、その動きは単なる素人のものとは思えなかった。昨日までの柔和な表情とは打って変わった厳かさが、彼女の佇まいから感じられた。
 鍛錬を終えた独神が身支度を整えると、ツチグモの元を訪れた。穏やかな笑顔で広間での朝食に誘う。これまで食事の類に一切手を出さなかったツチグモだったが、今日は腹をくくって口にすることにした。山にいた頃とは比べものにならない彩り豊かな料理の数々を前に、思わず面食らう。こんな贅沢な食事を当たり前のように口にするとは、まるで別世界だ。自分たちがひとの上に立つ特別な存在だと信じ切っているのだろうか。そんな嫌悪感が湧いたが、腹いっぱいに食べることを選んだ。食らうと決めたら徹底する。生きるためには必要なことだ。
 食事の後、独神はツチグモが望むような戦いを提示した。東国で村を占拠した悪霊の討伐。西の海で漁船を沈める悪霊の退治。

「好きなのを選んでいいですよ」

 独神は数枚の紙を差し出した。

「一人でも行けるし、誰かと組んでも良い。初めてだから、私がついていきましょうか?」
「いらねぇよ。ガキの使いじゃないんだ」
「判りました。気をつけて下さいね」

 ツチグモは東国の方を選び、その日のうちに出発した。討伐自体は一人で処理できる程度のものだったが、それでも山で旅人を相手にするのとは比べ物にならない血の滾る狩りだった。
 二日後、任務を終えて戻ったツチグモを、独神が本殿の門で出迎えた。

「お帰りなさい。怪我はないですか?」
「小物の相手に手こずるものか」

 ツチグモは素っ気なく答えた。多少は手を焼いたがそんなことを言う必要はない。

「よかった。もし後で痛みが出たなら霊廟へ行ってください。覚えてます? 場所は……」

 霊廟を案内する独神に大人しく着いて行った。覚えておくだけで、実際に行くつもりはなかったが。その時が万一きたら、だ。
 ツチグモは連日依頼をこなした。それぞれが力量に合った相手ばかりで適度な緊張感と満足できる戦いが続いた。
 罠を張って相手をじっと待つのがツチグモの狩りの形であったが、歩き回って敵を見つけて倒す形へと次第に変化した。今までにないやり方で力がついている実感がある。
 これなら来るべき日に悲願を果たせると思った。



 数週間が過ぎた頃、ツチグモは暇を持て余した休息日があった。本殿の妖たちとはそこそこ打ち解けていたが、わざわざ誘うような相手はいない。足の赴くままに向かった先は独神の仕事部屋だった。部屋には独神が一人だけで、大量の古い書物に囲まれていた。手元を覗き込むと珍しい文字で書かれた巻物だった。

「随分古い文字だな」
「まだ神が八百万界を支配していた時のやつね。これ、古い霊力がないと正確に読み取ることが出来ないの。私は一応独神だから読めるけどね」

 作業を中断し、目を合わせて解説する独神にツチグモは言った。

「手を止めるな」

 独神は頷くと再び文字を追い始めた。
 ツチグモは静かにその様子を眺めた。戦いに行かない独神は、いつもこうして部屋に籠って情報整理をしている。最近では敬語を使うこともなくなり、会えば気さくに話しかけてくるようになった。
 それでも、ツチグモは未だに独神のことが判らなかった。
 何故あれほどアクの強い英傑達が、この小柄な女が上に立つことを認めているのか。一血卍傑の秘術は確かに唯一無二だが、術師本人の武力が上がるわけではない。
 独神も当然それを理解しているはずなのに、人殺しのツチグモを警戒する様子が見られない。間合いを詰めても平然としている。
 試しに、独神の首に細い糸を巻きつけてみた。

「!?」

 驚いているが、それだけだった。身構えることも、逃げることもない。

「……貴様は恐ろしくないのか。俺があの山で何をしていたか知っているだろ」
「多分ツチグモより知ってるよ。でも逃げる理由にはならない」

 独神は首に糸をつけたまま、棚から一つの巻物を取り出してツチグモに見せた。そこにはツチグモが襲った人々の名が連なっていた。何もかもお見通しと言いたげに。

「貴様、おかしいぞ」

 独神はふっと笑い、遠くを見るような目になった。その表情には、いつもの柔らかさではなく、どこか諦めたような影が浮かんでいた。

「おかしいのはツチグモの方だよ」

 その言葉には非難ではなく、どこか親しみすら感じられた。独神は少し間を置き、静かに続けた。

「……私も人を殺したことがある」

 その言葉にツチグモは目を見開いた。予想外の告白に、一瞬言葉を失う。

「殺した数ならツチグモよりも上かもしれないよ」

 仄暗い目で薄く笑っている。
 その表情にツチグモは目を奪われた。どこか懐かしく、自分自身の姿を見るような感覚。聖人のごとき独神の仮面の下に潜む、自分と同じ闇。
 ツチグモは初めて、独神の影を目にした。
 自分と同じ側にいるのかもしれない。そう思った瞬間、何かが軽くなるような感覚があった。



 二ヵ月が過ぎ、ツチグモはすっかり本殿所属の英傑となっていた。英傑達の馬鹿騒ぎにも慣れてきて、誰かと酒を呑むこともある。討伐も誰かと組んでいくことが増えた。
 すっかり変わってしまった生活にこれで良いのかと疑問を抱くことはあったが、連日行う悪霊討伐が自身の形を留めてくれていた。
 悪霊を討伐する度に、ツチグモは自分の力が増していくのを感じていた。指先から放つ糸の精度、敵の動きを読む目、身体の反応速度、全てが日に日に研ぎ澄まされていく。

(この力があれば、あの時とは違う結果になる)

 復讐の炎は、日々の戦いの中で静かに、しかし確実に燃え続けていた。毎日がその一日のための準備だった。
 自分は復讐の為にここにいる。

「おい」

 討伐を終えたツチグモは、大将の義務である独神への報告のため情報管理部屋に足を運んだ。紙がそこら中に散らばったごみごみした部屋に来るのもすっかり慣れていた。
 丁度、独神の隣にはショウトクタイシがいて、どちらも自分に声をかけられたような顔をしていた。
 独神が尋ねた。

「どっち?」

 ツチグモは言葉に詰まった。

「……ど、独神に決まってるだろ」
「あ。私か。はいはい、どうしたの?」

 いつものように微笑んでいる。独神は誰にでも均等に笑いかける。

「報告だ。悪霊は倒した。だが他にも気になることがあって────」

 報告を終えた後、ショウトクタイシが「独神様」と自然に口にしていたことが頭から離れなかった。様付けすることに違和感はないのだろうか。ツチグモには到底理解できない。
 そういえば、英傑たちはそれぞれ独神への呼び方を持っている。一方、ツチグモはいつも「なあ」「おい」で済ませてきた。それがどこか落ち着かなくなっていた。
 本殿の廊下を歩きながら、いつもは気にならない英傑たちの会話が鮮明に聞こえる。

「独神ちゃーん!」

 ウラシマタロウが独神に飛びつこうとして竜宮の姫に殴られているのが見えた。
 ちゃん付けは却下だ。
 だがそれを抜けば……いや、独神は通称であり役職であり二つ名だろう。アマテラスを太陽神と呼ぶようなものだ。それは違和感がある。

あるじ様」

 様なんて死んでも付けたくない。
 そもそも「あるじ」と呼びたくないのだ。あるじと言えばツチグモの上に立つことを意味する。ここにいるのは狩りと復讐に役立つ情報のためで、独神に頭を垂れた覚えはない。

ぬし

 今までで一番しっくりときた。
 悪くないかもしれない。確かにこの本殿という縄張りのぬしは独神である。ツチグモと独神は利害関係が一致していて、お互いの領分を認め合っている関係だ。
 この呼び名なら問題ない。

(俺が突然、ぬしだなんて呼んだらどういう反応をするんだ)

 きっかけもなく呼び名を変えるのは少し恥ずかしい。関係が変わったわけでもない。相手に求められたわけでもない。そもそも自分がそんなに独神を意識していると思われるのが癪だ。

「あ、いた!」

 狙い澄ましたかのように独神が駆け寄ってきた。試すなら今だ。

「何の用だ」

 僅かな緊張が素っ気ない態度にさせたが、独神は意にも介さない。

「前言ってたでしょ。障害物がないところで戦いたいって。さっき依頼されたの。すぐ近所なんだけど行く? ほら。前にアメフリコゾウと行ったところ!」
「確かに近いな。良いだろう。すぐ行く」
「ありがとう。休みなのにごめんね。じゃ、私別のひとにも言いに行かなきゃいけないから」
「判った」

 言うべきか迷った末、ツチグモは試すように言葉を紡いだ。

「……戻ったら報告する。ぬし

 最後の一言は、意識して声を落とした。反応を見たいわけではない。ただ、自分でその響きを確かめたかった。

「気を付けてねー! 待ってるよー」

 パタパタと走って行ってしまった。

(何の反応もなかったな……)

 自分がどんな反応を期待していたのかは判らないが、一先ずこれで良いだろう。
 その後、ツチグモは「ぬし」という呼び方を自然に使うようになった。独神は特に反応を示すことはなく、いつも通り接してくる。独神にとっては呼び名の変化など取るに足らないことなのだ。少しでも反応を考えていた自分が馬鹿らしい。



 数日後、悪霊討伐のため独神のゴミ部屋(情報部屋)で待ち合わせていると、独神がワタナベノツナと緊迫した面持ちで語り合っていた。

ぬしさま。これが悪霊の所業ではないというのか」
「残念なことにね。どうやら刀を使う人族で、強い人がいるみたいなの」

 と独神が言った時、ツチグモの身体は一瞬こわばった。

(刀――奴の獲物だ)

ぬし! その制圧は俺が行く」

 いつもより強い意志を込めた声が部屋に響いた。
 独神はツチグモの微かな変化を見るようにじっと見つめる。一方、ワタナベノツナは独神に何やら耳打ちしており、その視線には明らかに否定的な色が浮かんでいた。
 しかしツチグモは独神を真っ直ぐに見据えて自分の真剣さを伝えようとした。

「……判った。でも気をつけてね。…………出来れば相手の言い分を聞いておいて」

 ここまで前のめりなツチグモは珍しいはずだったが、その理由は問わなかった。代わりに、いつもは持たせない治療の道具を無理やり持たされた。
 戦いは激しく、手ごわかった。刀を操る人族の動きは素早く、幾度も危うい場面があった。だがツチグモは冷静さを失わず、周囲に張り巡らせた糸を使って相手の動きを制限し、最後は見事に打ち倒した。
 刀を持つ男を倒した瞬間、胸の内に満足感が広がった。
 以前なら決して勝てなかっただろう相手に今は勝てる。確かな手応えだった。
 ふいに独神の言葉を思い出たので、負けた男に無差別に斬り捨てていた理由を尋ねた。
 男はあっけらかんと言った。

「刀であれば神も妖も斬れる。気に入らないもの全てこの世から消せるだろ」

 その言葉を聞いた瞬間、ツチグモは頼光のことを思い出していた。
 妖というだけで斬り捨てられた、あの理不尽さに勝てなかった悔しさを。
 ツチグモは男の首に糸を巻きつけた。相手が手をかけて糸を外そうとするのを、冷ややかに眺める。爪が糸に食い込み、首筋から血が滲む。必死に息を吸おうとして口をぱくぱくと開閉する様子が、陸に上がった魚のようで滑稽だった。

「くっ、っ……」

 足掻く男を見下ろしながら、ツチグモは糸をゆっくりと締め上げていく。急いで殺す必要はない。この瞬間こそが、ツチグモが最も愛する時間だった。
 男の顔が紫色に変わり始める。白目を剥きながらも、なお生への執着で手足をばたつかせている。その無様な姿に、胸の奥から熱い満足感が湧き上がってくる。
 一瞬で楽に死なせるつもりはない。

「苦しいか?」

 ツチグモは男の耳元で囁いた。返事はない。もう声を出す余力も残っていないのだろう。ただ、血走った目だけがツチグモを見つめている。その絶望に満ちた瞳を見て、ツチグモの口元に歪んだ笑みが浮かんだ。
 この男が今感じている恐怖と絶望を、頼光にも味わわせてやりたかった。
 やがて男の手が力なく垂れ下がり、身体から最後の痙攣が走る。瞳孔が開き、そこにあった光が静かに消えていく。
 その瞬間を見届けたツチグモは、深く息を吐いた。全身に快感が走り、久しぶりに心の底から満たされた気分だった。

(ああ……やはりこれだ)

 これこそが自分の本質。他者の苦痛と死に美しさを見出す、純粋な殺意。
 頼光との決着の日が、また一歩近づいた気がした。

「……嬉しそうだね。そんなに良かった?」

 本殿へ戻りすぐさま独神へ報告すると、まず一番に返ってきたのがそれだった。

「まあな。今なら正面からでも勝てそうな気がしてきたところだ」
「強くなれて良かったね」

 次に棚の向こうから嫌な声が聞こえた。

「主君。人殺しで悦に浸る者をわざわざ褒める必要はないんだよ」

 ヨリトモだ。あの男は出会った時からずっと、ツチグモに否定的立場をとっている。私闘が禁止でなければ真っ先に四肢を割いていた。
 それをせずに居られているのは、独神の変わらぬ態度だろう。

「理性があるなら私はとやかく言うつもりはないよ」

 ツチグモの残酷な嗜好を把握しながら咎める気はないらしい。

(奇妙な奴……)

 復讐のためだというのに、自分の成長を認めてくれる存在。これまでの人生で、誰かに受け入れられるという経験など皆無に等しかった。
 少しだけ、英傑達の上に立てる意味が理解できる気がした。



 大広間から聞こえる独神の鋭い声に、ツチグモは足を止めた。いつも微笑を絶やさない独神の顔には険しさがあった。気配を消し様子を窺う。

「ウシワカマル、詳しく報告して」

 少年のような風貌をしたウシワカマルの顏には包帯が巻かれ、血が滲んでいた。

あるじ様の指示通り南の村の守護をしていました。ところが村の長老の息子が悪霊と内通していたのです。彼は夜間に結界を解き、悪霊を導き入れました。僕は傷を負い、警備していた村の若者も数名が犠牲になりました」
「件の裏切り者は?」
「捕えています。彼は悪霊から力を約束されたと言っています」

 独神は目を閉じ、しばらく考えてから口を開いた。

「彼を連れてきて」

 少し後、両腕を拘束された青年がベンケイによって広間に連れて来られた。青年は、高慢な表情の奥に恐怖を滲ませていた。

「なぜ仲間を裏切ったのですか?」

 静かな問いかけに、青年が言い放つ。

「仲間だと? 冗談じゃない。俺の父は長老として村のために尽くしてきたが、結局英傑の判断一つで全てが決まる。俺たちには何の発言権もないんだ。これでは村は永遠に英傑の奴隷だ。俺たち自身が力を持つべきだ!」

 ゆっくりと立ち上がる独神は小柄な体躯だが、威厳に満ちていた。

「あなたは私たちを裏切り、村の人たちを危険にさらし、悪霊に手を貸した。英傑の主として、これを見過ごすわけにはいかない。私の決断は────」
「待ってくれ!」

 突然の叫びが部屋に響いた。

「命だけは……命だけは助けてくれ! 何でもする!」

 広間が静まり返る中、独神の目に冷たい光が宿った。
 そして、穏やかな笑みを浮かべる。その笑顔と眼差しの冷たさの対比が、青年を震え上がらせた。

「何でもするのですね?」
「あ、ああ……何でも」
「そうですか。では条件を出します」

 それは恐ろしいほど穏やかな声だった。

「西の峡谷に棲みついた悪霊、氷霜巨人を倒してきなさい。それができたら、全て許します」

 氷霜巨人は英傑でさえ単独では太刀打ちできないと言われる存在である。当然、ただの人族では結果は明らかだ。

「殺す気だろ! そんなものを倒せるわけがない!」

 真っ赤な顔で叫ぶ青年に、微動だにしない独神が冷たく微笑んだ。

「力を得るためにここまでしたのです。本気で力が欲しいなら、命をかけられるでしょう? それとも。村のことは建前で、本当はただ目先の力に溺れちゃった、とか」
「……判った」

 小さく呟いた後、青年はわなわなと震えて怒鳴り散らした。

「死ねばいいんだろう!!!」

 独神は微笑んだ。

「私は無理強いしていませんよ。ちなみに断った場合は、大陸への強制追放を考えています」

 青年は歯を食いしばった。

「俺は必ず戻ってくる。そして必ずお前を殺す」

 青年が足を踏み鳴らして退出した後、ベンケイが独神を窺うように言った。

「上様、あの悪霊は危険すぎる。奴は確実に死ぬ」
「さあ。どうかな」

 独神は抑揚なく答えた。

「自分で選んだ道だよ。それに成功すれば英傑以上の力を示せて、栄光を手にできるじゃない」

 そう言いながら、顔に白い布を巻かれたウシワカマルを見つめる。

「……ウシワカマルだったからこの程度で済んだの。他の人だったら取り返しがつかなかったかもしれない。私たちはどんな小さな村の要望も聞くけど、決して軽んじられて良いわけじゃない」

 ウシワカマルが申し訳なさそうに頭を下げた。

「すまない。あるじ様」
「見抜けなかった私が悪いの。……こんなに傷つくまで他の村人たちを救ってくれてありがとう」

 ベンケイに付き添われ、ウシワカマルが退出していく。
 一人になった独神は大きくため息をついた。その肩が僅かに震えているのが見えた。

「なかなか堂に入っていたな」

 ツチグモが思わず声をかけ、仕方なく姿を現した。独神は驚いたように振り向いた。

「っ、ツチグモ……聞いてたの?」
「死ぬか、追放されるか。実質的に選択肢はないに等しい」
「彼には機会をあげたよ。生きて戻れば、本当に力を手に入れたということになるんだから」
「生きて戻る可能性は殆どないだろ」
「殆どない……でも、零ではない。でしょ?」

 独神の目が遠くを見た。ツチグモが以前語った言葉に重ねていることに気づくのは一拍遅れてからだった。

「もし彼が、本当に英傑を凌ぐ特別な力や意志を持っているなら生き残るよ」

 ツチグモは思わず笑った。

「生ぬるいだけかと思えば。見直したぞ、ぬし

 独神は少し目を見開き、そして小さく笑った。

「生ぬるいだけでやりたいんだけどね、私は」

 なんでも許すように見えたが、どうやら時には冷酷な判断も下せるらしい。それは弱さではなく、責任を負う者の強さだ。

(正しく英傑のぬし、なんだな)

 奇妙な安心感がツチグモの中に広がった。



 昼が過ぎた本殿の台所前で、ツチグモは盆を持ったウカノミタマと出会った。その上には薬湯らしきものと軽い食事がある。

「ツチグモさん、ちょうど良かった!」

 ウカノミタマは困った表情で近づいてきた。

「貴様なんかが俺に何の用だ」
「あのね、あるじさまの食事を届けようと思ってたら、クシナダヒメから急用の知らせが来て……」

 今日、独神は一血卍傑の反動で昨日晩から寝込んでいるのは知らされていた。ウカノミタマは世話をしていたらしい。
 だがつい先ほど、傷ついた英傑の治療のために戦へ呼ばれてしまったのだという。巫覡であり豊穣の神であるウカノミタマは高度な治癒の能力を持っているため代役を立てられなかったのだろう。

「それにしたってもっと適任な奴がいるだろ?」
「今日は出払ってる子ばかりなの……」

 ウカノミタマは申し訳なさそうに食事の盆を見つめた。確かに、朝食の際多くの英傑たちが任務に出ると言っていた。本殿に残っている者は少ない。

「で、とうとう俺にまで給仕の役が回ってきたってことか」
「お願い! あるじさま、朝から何も口にしてないの。この薬湯は体力回復に効くから、できるだけ飲ませておきたいの」

 ツチグモは仕方なく頷いた。

「……持って行くだけだからな」

 ウカノミタマは安堵の表情を浮かべ、手早く食事の出し方を説明した。

あるじさまのことおねがいね~」

 そう言って彼女は駆け出した。ツチグモは持たされた盆を渋々独神の部屋へ運んだ。
 部屋の前には見張りがいるはずだが誰もいなかった。
 いるのは夜間だけなのかもしれない。

ぬし。俺だ。入るぞ」

 返事はない。ツチグモは独神の部屋に足を踏み入れた。
 独神は蒲団に寝ていた。無理に起こす必要はないと聞いている。盆は机の上に置いた。
 立ち去ろうとしたその時、独神の微かな呟きがツチグモの耳に届いた。

「お兄ちゃん……やめて……お願い……」

 その言葉にツチグモは足を止めた。振り返ると、独神は苦しそうに身をよじっている。手が空を掴むように動き、表情は恐怖に歪んでいた。

「悪夢、か……」

 ツチグモは引き戸で迷った。関わらないのが賢明だとは分かっていたが、あの穏やかな独神がこれほど苦しむ姿を見るのは、どこか腑に落ちなかった。少し興味がある。
 結局、独神に近づいた。

「おい、ぬし。起きろ」

 肩を揺すっても目を覚まさない。熱の所為か、悪夢の深さのせいか。
 ツチグモは独神の傍らに座り込んだ。ただそこに居た。
 歯を食いしばって苦しんでいる独神の額に無意識に手を置いた。汗ばんでいるのを感じる。
 すると不思議なことに、独神の呼吸が少し落ち着いたように見えた。身体の動きが穏やかになり、苦しげな表情が和らいでいく。

「……寝てる間も変な奴だな」

 ツチグモはそのまま独神の傍に座り続けた。やがて彼女の寝息が安定してきたのを確認すると、そっと手を離し、立ち上がった。

「ツチグモ……?」

 部屋の入口に向かう途中、独神の声が聞こえた。振り返ると、薄目を開けぼんやりとした様子でこちらを見ていた。

「なんだよ」
「そっちこそ。部屋まで来てどうしたの? 緊急事態?」

 ツチグモは言い淀んだ。事情を説明するのは面倒だったし、独神の弱った姿を見たからといって特別同情したわけでもない。そう自分に言い聞かせた。

「食事を届けろと言われただけだ」
「あ……そうなんだ。ありがとう」

 独神は恥ずかしそうに顔を赤らめた。その様子はまるで少女のようで、ツチグモは思わず目を奪われた。

「随分疲れているようだが変な夢でも見てたのか?」
「覚えてないけど、そうなのかもね」

 明らかな嘘だった。独神の目は僅かに逸らされ、手が無意識に握り締められていた。
 ツチグモは独神をじっと見つめた。悪夢の内容が相当深刻なものであることが窺えた。そして、先ほどの言葉を思い出した。

「兄か」

 独神の顔色が変わる。目が見開かれ、身体が一瞬固まった。

「なにを。どこまで知ってるの」

 その声には、今までに聞いたことのない緊張感があった。
 今にも襲いかねないような気迫。その切迫した様子に、ツチグモも思わず引き下がった。

「寝言で兄貴を止めているのを聞いただけだ」
「……それだけ?」
「それだけだ」

 独神は緊張を解いたように、深く息を吐いた。

「…………そう」

 しばらくの沈黙。ツチグモは独神の様子を伺いながら、問うべきか迷った。
 こんなに消え入りそうな独神は初めて見た。
 結局、彼女が口を開いた。

「私に兄がいることは秘密にしておいて。特定の一族の血を引いていると知られると面倒だから」

 政治的な意味合いがあるのだろう。そういうことに関わるつもりはなかった。

「言う気はない」

 独神は数度頷いた。その顔に覇気はない。
 ツチグモは黙っていた。このまま出ていくこともできるが、足が動かなかった。
 独神は遠い目をして、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「兄は私を守るために……殺したんだ」

 独神の声が震えていた。

「ひとりやふたりじゃない。もっともっと多いひと。私のせいで……」
「……ぬしのせいじゃねぇだろ」

 ツチグモは思わず言っていた。

「頼んでもねぇことを勝手にしたんだろ? そんなことまで責任負うなんてどうかしてる」

 独神は涙ぐんだ目でツチグモを見た。何故そんな言葉を口にしたのか、ツチグモ自身も分からなかった。

「……どうかしてる、か」
「別に、慰めてるわけじゃねぇよ。思ったことを言っただけだ」

 沈黙が流れる。
 悪夢として見ているくらいだ。ツチグモが一言二言言ったところで解決することでもないのだろう。
 独神は無表情のままじっと蒲団を見つめている。
 落ち着かない。なんでもいい。
 この沈黙を裂いた。

「……なあ」
「うん?」
「俺の糸は夢も捕まえられるぞ」
「え?」
「悪い夢は俺の糸で捕まえて食っちまえばいい」

 呆気に取られていた独神が小さく噴き出した。その笑顔にツチグモは得も言われぬ安心感を覚えた。

「それ、本当?」
「試してみるか」

 独神は頷いた。

「お願いできる?」

 手から糸を出したツチグモは部屋の隅々に細い糸を張り巡らせた。天井から四隅、窓辺から引き戸まで、見えない網が空間を満たしていく。

「これで完璧だ。悪い夢は全部捕まえてやる」
「ありがとう」

 独神は安心したように微笑んだ。そして再び蒲団に横になると、ツチグモに向かって手を伸ばした。

「注文が多いんじゃないのか」

 それでもツチグモは躊躇いなく手を差し出した。独神はその手を両手で包み込んだ。まるで祈るかのように。

「ちょっとだけ……このままでいて」

 断る理由も思いつかず、ツチグモはそのまま彼女の傍らに座った。独神はやがて再び眠りに落ち、今度は穏やかな寝息を立てている。
 手を離そうとしたが、独神の握る力は意外と強かった。仕方なく、ツチグモはそのまま床に座り込んだ。
 じっとするのは慣れている。
 なかなか放さなかった独神だが、それでもしばらくしたらその手から力が抜けた。
 手に残る柔らかさと温かさが、ツチグモの胸に妙な感覚を呼び起こす。
 こんな風に誰かに必要とされたのは、一体いつ以来だろうか。
 部屋を出る前、ツチグモは自分が張った糸を一本だけ残し、他は全て回収した。残した一本は、独神の枕元に小さな輪を作るように張られていた。
 「夢捕りの糸」だ。
 今考えた。効果があるかどうかは判らないが、気休めにはなるだろう。
 こんな子供だましを言う自分も、付き合う独神も、どうかしている。

2025/07/09に加筆修正

ツチグモの話。とりあえず冒頭。

・ヨリトモとツチグモはめっちゃ相性悪いと思う。
 なんか尊大じゃない? えらそー。
 モミジと甘味食べている時はそうでもないけど。

・蜘蛛って、巣を作るタイプと作らないタイプがいるよ。
 なんとなく独神の所に入るまでは設置型だから接近戦弱いんだろうなって思ったよ。
 今回の話ではね。

・英傑たちなんだけど、大体どの子もかわいいけれどそれは独神向けの特別仕様なのであって、基本的には近寄りがたい、怖い存在だよ。

・書いててアマツミカボシを思い出したけど、ツチグモの方が素直だと思う。

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